恋
□花見酒
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「隊長!こんなところにいらっしゃったんですか?ほら、早く戻って仕事を……」
「七緒ちゃん」
いつも明るい京楽隊長には見えない程、真面目な表情に、ちょっと胸の鼓動が早まる。
「……何ですか?」
「……桜、綺麗だよ」
以前と桜を見上げたまま話す京楽。
それにならい、桜を見上げる。
そこにはまだ七分咲きの桜の木。
「まだ満開ではないのですね」
「うん……だけどさ」
少しの沈黙。
だけど、の続きをなかなか言わない京楽に、どうかしたのだろうかと思い、目線を桜から京楽に移す。
「桜は満開の少し前が一番綺麗だと思うんだよ」
「満開の方が綺麗なのではないですか?」
「ううん……満開に咲いたら、あとは散るだけだからねぇ」
今気付いた事だが、京楽は酒を飲みながら花見をしている。
いわゆる花見酒だ。
「……隊長、まだ仕事中です」
「まあ、いいじゃないの……今年の桜は今年しか見れないんだから。七緒ちゃんもどう?」
「結構です」
「つれないねぇ」
そう言いながら酒を飲む京楽はとても幸せそうだ。
だから、そんな隊長に
ちょっとだけ付き合うことにしました。
END
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