□こいの唄
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「思いを寄せているあの人が待ってくれているような気がして、かぁ……」


ふぅ、とため息をひとつ溢し、窓を見ると洗濯物を干したままにしていたことに気が付いた。

机の上を片付けて、ベランダに出た。

風にはためく白い洗濯物を取り込んで、太陽の暖かさに顔を埋める。

ふんわりと暖かいシャツをたたむんでいると、何か声が聞こえたような気がした。


「……?」


気のせいと思い、洗濯物を部屋に入れようすると、今度ははっきりと聞こえた。


「井上さん!」

「え、石田……くん?」


何故彼がここに?という疑問が浮かんだが、すぐに打ち消した。


「ど、どうしてここに?」

「買い物の帰りなんだ」


そういい、手に持っていた袋を軽く挙げた。

それは、ヒマワリソーイングのものだった。


「そうしたら、ベランダにいた井上さんが見えたから」


柔らかく微笑まれ、織姫は顔が赤くなるのを感じていた。



(なにとなく 君に待たれるここちして 出でし花野の夕月夜かな)



「恋する乙女の純恋歌」


END

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