恋
□こいの唄
2ページ/3ページ
「思いを寄せているあの人が待ってくれているような気がして、かぁ……」
ふぅ、とため息をひとつ溢し、窓を見ると洗濯物を干したままにしていたことに気が付いた。
机の上を片付けて、ベランダに出た。
風にはためく白い洗濯物を取り込んで、太陽の暖かさに顔を埋める。
ふんわりと暖かいシャツをたたむんでいると、何か声が聞こえたような気がした。
「……?」
気のせいと思い、洗濯物を部屋に入れようすると、今度ははっきりと聞こえた。
「井上さん!」
「え、石田……くん?」
何故彼がここに?という疑問が浮かんだが、すぐに打ち消した。
「ど、どうしてここに?」
「買い物の帰りなんだ」
そういい、手に持っていた袋を軽く挙げた。
それは、ヒマワリソーイングのものだった。
「そうしたら、ベランダにいた井上さんが見えたから」
柔らかく微笑まれ、織姫は顔が赤くなるのを感じていた。
(なにとなく 君に待たれるここちして 出でし花野の夕月夜かな)
「恋する乙女の純恋歌」
END
NEXT→後書き