恋
□僕に映る。
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美術の時間。秋ということもあり、写生をすることになった。
風景でも人物でもいいから、この時間内に描きあげて提出しなければならない。
僕はひとり裏庭に来ていた。
時期もあって、裏庭の木々は色鮮やかに染められ、美しい景色を作り出していた。
これにしよう、と思い腰を下ろし、画用紙に鉛筆で木々を下書きする。
ある程度の下書きが終わり、パレットに絵の具を出した。
赤や黄色、オレンジで画用紙に彩りを与えていく。
紅葉の木が赤に染まったとき、視線をあげると、少し離れたところに井上さんが座っていた。
井上さんもどうやらこの景色を描いているようだ。
同じ考えを共有したことに喜びを感じながら、絵の続きを描くことに集中した。