恋
□こどもの日
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「やちる」
「あ、剣ちゃん!!」
色鉛筆で手を汚しているやちるを見て、剣八は怪訝そうに顔をしかめた。
「何やってんだ?」
剣八の問いにやちるは嬉しそうに答える。
「こいのぼり作ってたんだよ!!」
「……こいのぼり?」
「ほら!」
作り上げたこいのぼりを誇らしげに見せるやちる。
「……わざわざ作らなくてもちゃんとあったのによ」
「え?どこに!?」
あそこに、と大きなこいのぼりを指差す。
「あ……」
その存在に気付いていなかったことが恥ずかしくて、下を向く。
「……」
無言でやちるの持っていた手作りのこいのぼりを受けとり、部屋の花瓶に(花は無い)入れた。
「……これでいいだろ?」
ガバッという効果音が付きそうな勢いで顔を上げ剣八をキラキラと瞳を輝かせて見る。
「ほら」
ぶっきらぼうに投げられた袋の中にはやちるが好きなコンペイトウ。
「うわぁ!ありがとう、剣ちゃん!!」
いつものやちるだけの特等席に飛び付いて背中に自分の身を預ける。
(ここだけは、誰にも譲らないからね/20070505)
END
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