Night&Knight−夜と騎士−
□第九話
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彼女の口から語られる事実
「綾人は私の妹の子ども。そして、綾人の父親はホストだった――」
その言葉に幸村は眉を寄せて顔を顰めていた。
あの幼子の父親が自分と同じホスト――
同業者として嫌悪を抱かずにはいられない
幸村が眉間に皺を寄せた事に当然、慶次は気付いていた。
彼は純真無垢であるため、そう言ったことを許せないのだろう。
自分だってそうだ。
今は行方知れずの従妹が妊娠してその相手がホストだと知った時、自分もまた同じ職に就いていたのだから、
その男に対して抱かずにはいられない感情を抱いたのは言うまでもない。
自分や幸村、政宗など『Club BASARA』のホストの殆どは歌舞伎町内にいるホストとは少し違うのだが、それでも客である女性を持て成して夢を見せたり、自身の売り上げのためにという者が殆どであるのも同じ。
それを相手も分かっていてホストクラブに通うのだから、お互い様だ。
たしかに色恋営業や枕営業などをしている者もいるし、それを楽しんでいる女性もいる。
女性側にすれば、自分のお気に入りのホストを独占したいという思いもあるらしく、同伴やアフターを取ろうと必死にホストに貢ぐケースも多い。
それを一概に悪いとか言っているわけではないし、人それぞれであるのだから、自分や他人がとやかく言う権利もない。
しかし、体の関係を持った相手が妊娠したことに気付き、行方を眩ませるのは如何なものか。
おそらく幸村もそう思っているのだろう。
拳をぎゅっと握り締めた彼を見て、そう思った。
人間ってのは本当に複雑だよなぁ――
第九話
「怒らせると怖い人」