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□それを人は恋と呼ぶ
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「好きだ」
「─え?」
「返事は…急がねーから」
そう言って、山本は
その場を立ち去った。
─何だ?
何が起こってる?
好き?
山本が?俺、を?
─嘘だろ…?
「はー…」
家に帰ってからも、放課後の出来事が
頭から離れなくて、ため息ばかり漏れる。
『好きだ』か─。
冗談だって思いたいけど
山本はそんな冗談言う奴じゃない。
そんなの俺が一番よく分かってる。
それに、あの時の山本の顔…
真剣で、瞳の奥が揺れていて
何に怯えていたのか、少し震えていた。
─網膜に焼き付いて、離れない。
「明日、学校行きたくねぇ…」
俺の口からぽつりと零れた言葉。
ある意味、当然というべきだ。
ある日突然、天敵だと思っていた奴から
好きだ、と告白されて。
翌日、何事もなかったかのように
接するのは、絶対に無理だ。
だからと言って、休んだりしたら
結局山本から逃げてるだけだし
山本だって気にする。
「…どーしろってんだよ」
いっそのことOKして付き合おうか。
でも、気持ちがうやむやなのに
そんな答え出したって、最終的には
山本を傷つけるだけだ。
だったらやっぱり断る…
いや、俺別に山本のこと
嫌いってわけじゃ…いやいや
嫌いだけど!そういう嫌いじゃなくて…
じゃあ好きかって言われれば
よく分かんねー、し…
「どーしたらいんだよ…」