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□magic...
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真夜中に鳴り響く着信音。

俺は眠い目をこすりながらも
画面に表示された名前を見た瞬間、
急いで通話ボタンを押した。


「─、んだよ…」

『わり、寝てた?』


山本は、この時間帯に何とも
不似合いな問いを俺に投げ掛ける。



「ったりめーだろ…今何時だと思って…」

『隼人、』


電話越しの山本の声は、心なしか
震えているような気がした。


「…何」

『愛してるって言って』

「は?」

『…お願い』


唐突な羞恥注文に
罵ろうかと思った刹那、
今にも崩れそうな山本の声は、
ただ俺を欲していることに気づいた。


普段、弱いところを
あまり見せない山本。
だから尚更、そんなことを言う
理由が気になったけれど
聞いたところで、素直に
話すような奴じゃないから。

とにかく、今は
声の震えを止めてやりたくて。
ただ、安心させてやりたかった。



「あ、いし、てる…」


思わず出てしまった言葉に
焦っていると、



『…ありがと、隼人』

という声が聞こえてきて。

その安心しきった声に、
震えなんて微塵もない声に、
俺は心から安堵した。


「…おう」


弱っている山本を、一瞬で
救ってあげられる魔法は
きっと俺しか使えない。





fin.


 

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