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□絡む想い
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「今日獄寺ん家泊まりたい」

「は?」



さっきまで漫画に夢中なっていた山本が
急に、そんなことを言い出した。





小一時間前、山本から突然
「遊びに行っていいか」という内容の
メールが届いた。


自分も暇を持て余していた頃だったので
気持ちは二つ返事で
OKのメールを送った。



それから10分もしないうちに
山本は訪ねてきて、
二人でゲームをしたり、
しょうもないことを話したり、
漫画を読んだりと。

何とも中学生らしい
「遊び」をしていたのだ。




そして、今に至る。





「…だめ?」

「や、別にいい、けど…」



子犬のような眼差しで
そんなことを言われたら
断れる奴なんかいない。


丁度明日は日曜日で、絶好の
泊まり日和というやつだった。





「けど、親父さんにちゃんと言えよ?」

「わぁーってるって!」




すぐさま、親父さんに
電話をしている様子の山本。

親父さんからもOKの返事が来たらしく
山本は、とても嬉しそうに
電話を切った。





それから、再びゲームの続きをしたり
漫画を読んだりしていた。





ふと時計を見ると、針はすでに
18時を指している。




「…晩飯どーする」

「ん?おぉ!もうそんな時間かー」

「…コンビニでも行ってくっか」



適当に菓子や珍味を買ってくるのが
無難かな、なんて思ってたのに。





「…獄寺が作って」

「あぁ!?」



何を言いだすんだこいつは?
俺は、露骨に嫌そうな顔をして
そう返した。




「…だめ?」


何故だか分からないが、俺は
山本の「だめ?」には相当弱い。

アホかって返したいのに
罵声がのどに引っかかって。
一向に出てこようとしないのだ。




「、でも」

「でも?」


「…ろくなもん作れねぇ」

「獄寺が作ってくれるなら何でもいい」



お前どんだけだ!と
言いたいところだったが
山本の嬉しそうな表情を見たら
そんな言葉ものみこんでしまった。




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