novel
□運命共同体
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「お前さん、よく見ると目、案外鋭いんじゃのう」
日誌から顔を上げると、仁王くんの顔が至近距離に迫っていました。
「…そうですか?」
私はなるべく冷静に返答したつもりでしたが、もしかしたら顔が少し紅く染まっていたかもしれません。
…仁王くんに気付かれていなければ良いのですが。
「おぅ。紳士という割には、結構厳しい目をしちょるよ」
「…そういう仁王くんも、詐欺師らしい目付きですよね」
そんなに自分の顔ばかりを観察されるのも恥ずかしいので、私も言い返してみる事にしました。
「ん、それは何じゃ褒め言葉か?」
「そう受け取って貰って構いませんよ」
そう言って再び日誌へ視線を戻そうとした瞬間、突然視界が歪みました。
慌てて顔を上げると、仁王くんが私の眼鏡を持っています。
「に…仁王くん!返したまえ…」
「想像通りじゃ。やっぱ似とる」
似てる…?仁王くんの言葉が理解できずに首を傾げていると、彼はニヤリと笑いながら説明を始めました。
「お前さんと俺の顔が似とるってことよ」
「…え?」
今まで考えてもみなかった事に正直驚きつつも、私はぼやける視界の中で仁王くんの顔を凝視してみました。
……言われてみれば。髪型が違うとはいえ、鋭い目付きも輪郭も、心なしか鏡で見ている自分に似ているような気がしてきます。
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