novel
□4センチ
1ページ/4ページ
「マジ有り得ないんだけど」
帰り道、隣で先輩が不機嫌そうに呟いた。
4センチ
「去年は俺より小さかったくせに」
「しょうがないじゃないっスか、こーゆーのは個人差なんだから」
俺の言葉を聞いても先輩は尚不服そうにフーセンガムを膨らます。今日の日程は身体測定のみ。その後いつも通りに部活をして、今に至るのだ。
俺にとっては身長差なんてどうでもいいのだが、それを口に出すと怒られそうなので飲み込んでおいた。
「だってたった4センチでしょー?それに、他の先輩達のほうが俺より大きいし…「お前だからやなの!」
そう言うと先輩はプイと顔を背ける。そんな拗ねた動作も十分可愛いのだが、このままこちらを向いてくれないのも何だか寂しい。
「どうして俺だと嫌なんスか?」
「…どうでもいいだろぃ?そんなの」
「後輩の俺に負けたくなかった?」
「………違う」
じゃあ何で…と問い返そうとしたのだが、気付くといつの間にか分かれ道まで来てしまっていた。