君から届いた恋文

□Wonderful Square Box
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“逆チョコって良いよね!乙女の憧れだよ!”と話した数日前。
あの時は盛大に“似合わない!”と笑い転げてくれたっていうのに、たった今、この状況は何だろう・・・?
机の前に置かれた大きな白い箱。
教室において一際異彩を放つそれは、蓋を開けることによって、再び非日常的な風景を作り出した。


「えっと、ブン太?これは?」
「・・・お、おま、自分で言ったことも忘れたのかよ!?」
「誕生日・・・じゃ、ないよね。私の誕生日じゃないし」


確かに彼がケーキ作りに長けていることは知っているけれど、まさか、今日という日に差し出されるなんて思いもよらず、謀りかねる真意に首をかしげるばかりの私。
だって今日はバレンタインデー。
一般的には女の子が男の子にチョコを送る日だ。


「あー、なんつーか、その・・・らしくねぇのは分かってんだよ」
「ブン太?」
「けど、藍が欲しいっつーから、だな・・・」
「もしか、して、これってバレンタ・・・」
「あーもう、わざわざ口に出して言わなくてもいいつーの!」


向かいの席から慌てて私の口を塞ぐために手を伸ばした彼の顔は、その目立つ髪の色と同じくらいに真っ赤だ。
そんな姿を見て、ただひたすらに期待が高まっていく。


「覚えててくれたんだ・・・」
「まぁ、な」
「散々、バカにしてくれたくせに」
「・・・こういうバレンタインも・・・アリだろぃ?」


いつもは自信満々な癖に、こんな時だけ少し弱気な上目遣いは決定打。
うんと頷く頃にはもう、私の顔は負けないくらいに真っ赤になっているだろう。



Wonderful Square Box
(私自身がチョコを渡すタイミングを逃してしまったことに気付くのは、それからしばらく後の話)



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