DOD

□怒りと悲しみ
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マナと旅をはじめて
6年ほど経った…
復讐心も消え始めていた
マナもだいぶ俺のことを怖がらなくなってきていた。
だが…
マナがこの贖罪の旅の意味をきちんと理解してくれるにはまだまだだかかるだろう。
この旅は…自分を責める旅ではない。
自分の罪を償う為の旅だ。
人は…罪を許すことができる。
例えその罪が許されたとしても
罪を犯した人にとっては納得できないだろう?
辛いだろう?
苦しいだろう?
だから…
残りの一生は自分の為に罪を償って生きていくんだ…。


またいつもと同じ朝が来た
いつものように出発するはずだった…。

「カイム…ヴェルドレが裏切りおった…助けてくれ…カイム…」
アンヘルから声が飛んできた。
「何故だ!!ヴェルドレ…何故!裏切った…」
アンヘルの居場所など知らない
ただただ走った。

その時…「マナがドラゴンの声がした」っと言った。
洞窟の方を指差している。
「ほら!こっちこっち!!早く!」
他に頼るあてもなくマナについていった。
洞窟は小さくて前屈みにならなくては入れなかった。
中は薄暗くほとんど何も見えない…
「ほらっそこ!なにか動いた!!」
マナが指差した方をよく見た。
次の瞬間…
激痛がはしる。
鋭くて硬い何かで目を刺された。
マナだ。
マナが尖った石で目を指したのだ。
横をすり抜け走り去って行く。

絶望した…何故だ?マナ…お前まで俺を裏切るのか?お前はまた罪を犯すのか…?


マナを追いかけた。
マナは…
泣いていた…
怖がって泣いているのではなく…
悲しみと苦しみの
涙だった…。


やっと追いついた…マナを崖まで追い込んだ。
が…
「憎まないで、憎まないで、私…死ぬから…ね?…」そう言いながら
マナは崖から飛びおりた
憎んでなどいないのに…
ただ虚しいだけなのに…


もう生きていないだろう…そう思った。

しばらくは
マナが飛びおりた崖の底の方を
ぼんやりと見つめながら
無気力につっ立っていた。
不意に左目の痛みが戻ってきた。
その目から見える風景は
己の血だけ。
もう使い物にならないか…
俺は…お前を本気で許そうと思っていたのに…

そうだ…アンヘルは…どこにいる?
また…ただただ…走り続けた。

 

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