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□・傘を忘れたふり(ほんとは折りたたみ持ってるけど、ね)
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突然の雨で、放課後の昇降口は雨宿りの生徒で溢れていた。古泉は鞄を開け、入れてあった折りたたみ傘を取り出……そうとしたその手を止める。
空を見上げて佇む、キョンの姿が視界に映ったからだ。
「なんだ古泉、お前も傘持ってないのか」
古泉の視線に気付いたのか、キョンがこちらに顔を向ける。
「ええ。そうなんです」
古泉は何も取らずに鞄から手を抜くと、鞄を閉めた。
「ふーん。お前なら折りたたみ傘くらい常備してそうだけどな」
「いつもなら持っているんですけど、今日はたまたま忘れてしまったみたいです」
「そうか……」
古泉に短く返すと、キョンはもう一度空を見上げる。灰色の雲が覆っている空からは、大粒の雨。少しも小降りになる様子は無い。
「止まねぇな……」
「通り雨だと思いますから、そのうち晴れますよ。……だから、それまで僕と話でもしませんか?」
古泉の言葉に、キョンは嫌そうに眉を顰め、彼を見た。
「お前とか?…………まぁ、一人で待つよりは良いか」
「有難うごさいます」
古泉は笑顔で礼を言うと、キョンの隣に移動した。
こうして雨が止むまでの数十分、古泉はキョンと楽しく過ごすのだった。