BLT
□1.君の体温が優しくて
1ページ/1ページ
涼宮さんを中心に並んで歩く女子三人。その後ろを数歩離れて僕と彼は歩く。
今日の話題は彼の興味を引いたのか、珍しく口元に笑みを浮かべ、話し返してくれる。
ふと、前からきた通行人を避けようと彼が僕の方に体を寄せた。
彼の手に僕の手が一瞬触れる。感じた体温を手放したくなくて、通行人を見送り僕から離れようとした彼の手を握った。
恥ずかしがり屋の彼は、人前で手を繋いだりする行為を好まない。
だから、怒っているかもしれないと彼を見れば、俯いたまま歩く彼の姿。
やはり怒らせてしまっただろうか?
「……すみません」
そう言って、離そうとした手を彼の手が握り返した。
「……このままでいい」
「えっ……いいんですか?」
驚く僕に、俯いたまま小声で答えた。
「ああ。……言っておくが、今日だけだぞ」
「はい」
「それと……」
彼が顔を上げた。頬が少し朱に染まっている。
「ハルヒ達がこっちを見たら、手離すからな」
「はい、わかってます」
きっと今の僕は、誰が見ても幸せだと思うような顔をしていることだろう。
彼と手を繋いで歩く帰り道。彼の体温を少しでも長く感じていたいから、前を歩く三人がどうか振り向きませんようにと、願った。