ハルヒ(短編)

□・演技に隠す僕の想い
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「おや、これは……朝比奈さんの書いたシナリオですね」

「なに!?」

僕の言葉にあからさまに彼が反応した。本当にわかりやすい人ですね、あなたは。

「これは……」

シナリオに目を通して驚いた。まるで僕の心を見透かしたような、その台詞に。

「おい、古泉。なにが書いてあるんだ?俺にも見せろ!」

「見せろ、ってこの告白シーン、あなたも朝比奈さんと一緒に作業していたはずですが?」

「……恥ずかしいから、って見せてもらえなかったんだよ」

なるほど。確かに彼女なら恥ずかしがる台詞だろう。

「いいから貸せよ、それ」

彼が僕に向けて手を差し出す。興味津々といった彼の態度。自分に素直なところも彼の可愛さだが、相手が朝比奈さんというのが憎らしい。

「気になりますか?何が書いてあるのか」

「当たり前だ。朝比奈さんを落とせる魔法の呪文だぞ」

即答ですか。本当にあなたって人は。
どうしたら、僕を見てくれるんでしょうね?
僕はいつだって……。

「いつもあなたを見ていました。絶対に私の手には入らないものだと、わかっています」

朝比奈さんのシナリオを彼には渡さず、僕は読み上げた。
僕の気持ちに気付かない彼に対する意地悪の意味もあったが、それ以上に演技でもいいから気持ちを口に出したかった……のかもしれない。

「お、おい、古泉……」

彼の制止の声を無視して、僕は続ける。

「それでも、気持ちは止まらないんです。あなたが……好きです」

決して口にしてはいけない言葉。それでも彼を見てると思ってしまう。

もし叶うなら、演技ではなく、誰かが作った台詞ではなく、僕の言葉であなたにこの想いを伝えられたなら、と。

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