ハルヒ(短編)

□・一夜限りの夢
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「願ってますよ。だから、今まで何もしなかったんじゃないですか。僕はきちんと友人の顔が出来ていたでしょう?」

確かに、今言われるまで、古泉の気持ちに気づかなかった。

「何度も諦めようと思いました。でも、苦しくても辛くても、この想いを諦める事が出来ないんです。……お願いです。好きになって欲しいなんて言いません。明日から、口を聞いてくれなくても構わないです。だから……一度だけ、僕に抱かれて下さい」

俺は古泉に視線を戻した。初めて見る悲痛な表情。
俺が彼女といるときも、古泉は始終笑顔でいたけれど、本当はこんな顔をしていたのだろうか?

俺は小さくため息をついた。もういい。諦めた。どうせ何を言ったところで、古泉は手を離す気は無いんだろうし。

……まあ、本気で暴れればどうにかなるかもしれないが、俺も無傷とはいかないだろう。
それに……ここまで言ってくる古泉を突き放すのは、残酷な気がした。

俺はゆっくりと瞳を閉じた。
夢。そう……これは夢だ。一夜限りの悪夢だと思えばいい。

「ありがとうございます。……優しくしますから」

古泉の手が俺の手を肩を離れ、制服のボタンを外していく。シャツのボタンも外され、あらわになった肌に、古泉が何度も口づけを落とす。

男同士の行為など知らない。何をされるか解らない恐怖に、俺は縋るように古泉の背中に腕を回した。

古泉の口から、小さく笑う声が漏れる。それが喜びからくるものなのか、それ以外のものなのか、瞳を閉じていた俺には、表情が見えず解らなかった。
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