自虐詩 -Diatraction-

□作品No.6〜10
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No.7

早春の候



春の陽に包まれた
暖かな日溜りの中
小さなこの手で
傷を隠す
影を作り出し
その中に身を収める

春など来なければ
いいのにと
澄んだ青い空睨み上げて
天に吐き捨てる
冷たい雪解け水が
山から冬を運べば
いいのにと
澄んだ小川を見下ろし
地に吐き捨てる

咲く花を恨み
柔らかな風を憎み
どんなに心切り裂いても
巡り来た春
暖かさが憎い
光が憎い
ねぇ 照らさないで
灰色の冬のままの私を
どうか照らさないで



―――――――――――――――
同情より
傷付いたままの方が楽だから。
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