自虐詩 -Diatraction-

□作品No.31〜35
2ページ/5ページ




No.32

sweet memory



失くした夢と故郷は
クローゼットの
奥にしまった
小さなコートの
ポケットの中

ハンカチーフに包んだ
甘い香りは
忘れた記憶を呼び覚ます

ママが買ったお洋服は
私には
とっても似合っていて
窮屈な心に似合っていて
嘘の輝きを与えてくれた

鏡に映った私を
ワタシと
思い込んでいた過去は
甘く幼い少女の香り
私が拵えた新しいお洋服
ワタシに似合っていると
信じ続けていた

ハンカチーフに沁みた
甘い香り
目覚めた私は舞い戻る
ママの作った甘い香りに


―――――――――――――――
レールの上を歩く事を強いられ
「イイコ」に育った私に
自ら生きる力などなく
親の敷いたレールの上を
歩く事しか出来なくなっていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ