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□大切って何でしょう
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ぐすぐす。
金髪の美女が目の前ですすり泣いている。
参った。
こんな所を見られたら、俺があいつに殺される。
「私なんて、足手まといで…」
弱い、弱いと目の前の美女、ミントは連呼している。
彼女の気持ちはわからないでもない。クレスの気遣いには、確かに時折ぐさりとやられるときがあるのだ。
しかし、俺はあいつの親友だ。あいつの結婚式では、仲人を任されるに違いない俺である。
ここでミントに同調するわけにはいかない。
「クレスはさ、大事なものは仕舞い込んじまう質なんだよ」
俺は言った。
昔からそうなんだ。
例えば新しい練習着を、汚れるからと言って着ないでいては、親父さんに怒られて。
「わかるか?」
傷つけるのが、堪らなく嫌なんだよ。
大切なら、大切なほど。
なぁミント。クレスは、大切なものを、本当に、ばか正直に大切にするんだよ。
ミントは目を見開いた。瞳から、涙が一粒。そしてそれは、先程とは違った意味合いを持っているに違いなかった。
ミントは立ち上がる。よし、行け。そして早く俺を安心させてくれ。
駆け出すかに見えたミントはふと、俺を振り返った。
口元には、笑み。
「チェスターさんは、大切なものはそばに置いておきたい派?」
にやり、というか、くすり。そんな感じの微笑みだ。
「あー、どうかな。まぁでも点検とかできるものなら、わりと四六時中様子見てるな」
「そうですか」
なるほど、とミントはまた笑った。
どうやらお見通しらしい。
――――アーチェさんに突っかかるのは、点検なんですね。
と、その瞳が言っていた。
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