「銀色君、銀色君、」
「うるせぇ!その変な呼び名で呼ぶな!」
「だって銀色君だから、」
そう言ってこいつは人の服の袖を少しつまんでへらりと笑った。俺はこいつが苦手だ。ある時出会って、俺の前から消えては現れまた消えてはこうして現れる。いつもヘラヘラ笑いやがって、睨んでも動じねぇしちょっとやそっと暴言を吐いたところでこいつには効き目がない。俺のことだって変なふうに呼ぶし、悔しいが勝負なんか俺は一度もこいつに勝ったためしがない。俺はこいつが苦手だ。
「銀色君は優しいね、」
呆れながら馬鹿じゃないのかと罵ってやった。本気でそう思ったんだ、俺が優しいだって?すげぇ笑える。
「ううん、優しいよ、私はそんな銀色君が大好き。」
俺はまた馬鹿じゃないのか、と罵ってやった。
袖を掴んだこいつの手を振り払うのは簡単なのに、それが出来ない俺はこいつよりも馬鹿だ。
指先に触れたい
20110113