リリカルなのは《短編》

□俗・秋晴れの祝福
1ページ/1ページ



入浴とは良いものだ。
古来より、入浴とは人々に身心共に癒しを与えてくれる行為であると言っても過言ではないだろう。私自身、入浴は日々使いきった気力や疲れた肉体を一瞬にして癒してくれる最高の一時とも言える。
まぁそんな爺臭い事を考えてしまう歳になったと言うことは気にしない事するが。

とにかく、風呂に入ると言うことは癒しを与えてくれる行為であると言いたい。

だが…

「………」

気が付いたら浴場に管理局の制服姿で…しかも体がバインドで拘束されていたら、癒しもへったくれもあったものじゃない。

そして自分の眼前に佇むは、機動六課のオールメンバーだったりする。しかも身につけるはバスタオル一枚…。

「………」

微妙に肌につく湯気に不快感を感じながら、ここまで至ってしまった経緯を思い返す。
とは言っても、正直顔を赤らめたティアナが私の口に箸を突っ込んだ辺りまでしか記憶に無い。
あるとは言っても、目が覚めそうになる感覚の後に頭が鈍器か拳骨か何かで殴られ、また意識の海へとダイビングする感覚くらいだ。
一体何があったんだ…。
今が俗に言う「ここはどこ?私はダレ?」状態なんだろうか。

そんな逃げ切れないとわかっていながらも現実逃避する私に、バスタオル姿の六課の面々が口を開く。

「た、高にぃ!!」

「今日こそ決めて貰うよ!!」

何故か据わった目付きをするなのはとフェイト。
わかったからとりあえず大声を出さないで下さい…。
触ってないから分からないが、確実に頭にある無数のたんこぶがヒリヒリと傷んだ。

「城島…!」

「この中で誰が一番好きなんや!?」

居候させて頂いてるが今はそんなこと関係無いだろう?
なのはとフェイトを押し退け、再度叫びをあげるは凛々しく立つ烈火の将のイメージを完膚無きまでにぶち壊したシグナムと、こちらもまた目が据わったはやてさん。
二人の声が頭の中にガンガン響く。

「誰が一番…?」

「「「うん!!」」」

自分の言葉に全力で頷く一同。
そうだな。確かに誰が一番好きだなんて考えた事は無かったかもしれない。
おぼろ気な頭で写し出される過去の走馬灯…。
とりあえず、はやてさん達は居候させて頂いてる家族であり、こんな自分を大切にしてくれる守るべき人達。

だが何故だろう。シグナムだけは心に引っ掛かるような…。
まぁ、それはとりあえず置いておこう。
なのはとフェイトは妹…と言うよりも、手の掛かる元気いっぱいの娘みたいな感じだ。まぁ最近に置き換えれば、手の掛かる元気いっぱい思春期を迎えた娘だろうか…?
こないだなのはの部屋の大掃除を手伝っていたら"縛りプレイ"や"束縛少女湯けむり珍道中"…とか書いてあるイケナイ本が多数出土したので、こちらで廃棄処分させて頂いたが…。
てゆか、なのはの模擬戦時に"バインドで拘束してぶっ飛ばす"の戦法…いや、性癖が悩みの種でもあるが…。
まぁそんな二人は、年を食った私にとっては大切な娘として二人は写っている。

そして、その結論から導き出される答えは自ずと出てきたのだった。

「私に一番なんて無いです。皆大切な家族ですから…。」

ビシィと空気に音が響き渡る。
なんでしょうか…私また悪い事言いましたか…?

そんな中、なのはの一言により、戦火の火種は切って落とされたのだった。


「じゃあ…私達全員高にぃの"嫁"?」






その後、高人の史上最強嫁決定戦が、浴場にと全員裸に近い状態で開催された。

意識もうろうの高人がそれに巻き込まれたのは言うまでもないだろう。



ちなみにだが、一連の騒動が収まった後、高人がミッドチルダ総合医療センターにてレイ先生と愉快なリハビリルームに運ばれた際、汗と疲労の海に沈むスバルとティアナを発見したとかしなかったりとか。


END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ