リリカルなのは《短編》

□秋晴れの祝福
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秋空が続く穏やかな昼下がり。

六課の仕事を終わらせた私は、いつものように軽い足取りである場所に向かっていた。


【昼下がりの幸福】


じり貧と言われた管理局の執務仕事は私が来たお陰で割りと…まぁクロノ曰くかなり改善されたらしい。
今までは指定された日時までに書類が提出されてなかったり、各部隊との査問委員会を訓練と言う爆滅行為で隊舎ごと吹き飛ばして延期にさせたりなど…。
てゆか、それを話したクロノがトラウマかなにかで病んでいるように見えた気がした。

とにかく、課せられた仕事を私がキッチリ終わらせるようになってからは六課の評判がうなぎ登りで上がっているようだ。
確かに最近、新人魔導師の志願人数枠が増えたとか皐さんがそれはそれは嬉しそうに言っていた。結局入ってきたのは志願人数枠の半分以下だったような気がするが。それとやけに皐さんがすっきりした表情をしていたのは覚えている。
とはいえ、管理局内でも機動六課の活躍は日々伝わり、私達も尊敬の目を浴びるようになった今日この頃。

「今日も平和だなー」

エルフィン片手に持つ皐の新人訓練を見下ろしながらどこまでも広がる空に一言そう吐いた。

ここは屋上。
最近は執務仕事から新人FWチームの訓練監督までの空いた時間をずっとここで過ごしている。
流れ行く雲を見上げながら、持参した数十段のお弁当を見ながら苦笑を溢した。

そう。私がここに通う事になったのは…

「高にぃー!遅れてごめぇん!!」

「ちょっとスバル!そんなに引っ張らないで!」

この二人の妹分の食を満たす為…なのかもしれない。



「うーん!高にぃの料理は食べても食べても飽きないよぉ」

「それはどういしまして。」

「あ!スバル!それアタシのミートボール!!」

「早い者勝ちだよー!」

早朝から作ってきた激盛り弁当はすでに半分ほどまで減っていた。毎回だが、スバルの食欲旺盛ぶりには目を見張ってしまう。対照的にティアナは少量ずつちびちび食べている。

それぞれは見慣れた光景でもあるが、二人と一緒にこうやって昼食をとるのは管理局に入ってからになる。

スバルは空港火災事件以降から何かしろ面倒を見ており、いわば可愛らしいわんぱく妹分。
ティアナは親友であったティーダから託された大切な親友の妹であり、自分の家族。
そんな二人がバディを組んでいるとなのはから聞いた時は思わず飲んでいた緑茶を溢してしまったが…。

その頃の私は…と言うと、管理局予算課に配属されていた為、二人からの誘いを受けても馬鹿げてる量の予算見直し書類(なのは達が隊舎をぶっ飛ばしてしまう為の予算見直し)に追われていたので、今みたいに昼食を取ることは滅多に無かった。だが、クロノの計らいのもと機動六課に転属した際に、二人から昼食の誘いを改めて受けたのだ。

最初はティアナが誘いに来て、次にスバルが誘いに来て、そして鉢合わせになった二人が言い争いになり、殴り合いになり、そして手加減無しの模擬戦が繰り広げられた(まぁ皐さんが騒ぎを聞き付けて武力介入して最後の最後に黒天白夜を受けたのは私ですが)。
その後に、妥協案として出された"三人で食べる"で落ち着いたのだ。

最初は何故かビリビリした空気が流れていた昼食の時間も、今では私にとっての至福の時間でもある。大事に育てた妹達が元気に昼食を取り合う…取り合う…。

「じゃあミートボールに名前書いときなよ!」

「ミートボールに名前なんて書けるわけないでしょ馬鹿スバル!」

「なにをー!!」

「ハイハイストップストップ。それ以上続けるなら明日は二人の嫌いな物ばっかり詰めてきますよ?」

「「うぇー…」」

こう言い合うのは勘弁して貰いたいものだが…。そんな事を思いながら、自分も弁当に箸を付ける…ふとそこで気が付いた。

「スバル。これ食べてないでしょ?」

弁当の隅に残った煮物。
ティアナは手をつけているものの、スバルが全くその煮物を食してなかったのだ。私の指摘に先程まで騒いでいたスバルが体が強張った。

どうやら図星のようだ。

しかしながら、スバルは嫌いなものは嫌いと言う変な信念(?)からか、好き嫌いせず食べなさいという言葉は100%と言っていいほど力を為さない事は小さい頃から面倒を見てきたのだから百も承知だ。

だが、長く面倒を見ている私に対抗策が無いと思いますか?
おもむろに私は箸で煮物の菜っ葉類を一掴み。

そして

「ハイ、スバル。あーん」

「「!!!?」」

ビシィと言う効果音が屋上に響いた。
あれ?私、なにか不味い事をしましたか?
とにかく、好き嫌いは成長の妨げになりますので、食べなさいとスバルに煮物を差し出す。

「う…うぅー…恥ずかしいよ…」

「こうでもしないと食べないでしょう?野菜も食べないと強い魔導師にはなれないんですよ?」

「そんな売り文句…子供にしか通用しないよぉ…」

「充分スバルも子供です。ハイ、あーん。」


昔からこれにスバルは弱い。
最初は少し言葉の攻防戦があるが、長期戦に持ち込めば…

「あ…あーん。」

パク。と結局は食べてくれる。ちなみにギンガがやってもゲンヤさんがやっても食べなかったみたいだが…

そんな昔の面影と恥ずかしながら煮物を食べる今のスバルを照らし合わせながら和んでいたら…

「た…た…高人さん!!」

今まで沈黙していたティアナがいきなり叫んだ。ティアナ…今の音量は中々効きましたよ?

そうティアナを軽く説教する言葉を出しかけた瞬間、何かが口の中にーー

「ぐぉ!?」

薄れ行く意識の中、私に見えたのは箸を私の口に突っ込んでおいて顔を赤らめているティアナの顔だった…。




「わーー!?ティアナ何やってんの!?大丈夫!?高にぃ!」

「…高人さんにあーん…高人さんに…ブツブツブツ…」

「ティアナ?ちょ!鼻血!?ティアナーー!高にぃも動かない!?高にぃーー!ティアナーー!!」











その頃の訓練場。

訓練生「あ、スバル先輩!」

訓練生「なんだか屋上で騒いでるね。何かあったのかな?」

ランニングしながら屋上で騒ぐスバルを見上げる訓練生達。だが、彼らは気付いてなかった。上で騒ぐスバルよりも自分達が最も警戒しなければいけない相手がいることに…

皐「こらー。喋ってると明後日の朝までランニングさせるよー?」

訓練生「さ、サーイエスサー!!!榊教導官殿!!!」

はやて「わー…スバル達…楽しそうやなぁ…」

なのは「ふふふ…楽しそうだからあとで…お仕置きしないと…ね♪」

シグナム「ナカジマ、ナカジマ、ナカジマ、ナカジマ……ランスター、ランスター、ランスター、ランスター……よくも私の高人と…ブツブツブツブツ…」

ヴィータ「……オイ…てめぇ…」

訓練生「ハッ!何でしょうかヴィータ副隊長殿!」

ヴィータ「ランニング終わったら模擬戦すっぞ…全員に伝えろぉぉぉ!!」

訓練生「はいぃーーー!?」

訓練生「助けて下さいよーテスタロッサさーん(涙)」

フェイト「…クスクス…笑ってゴーゴー(黒微笑)」

訓練生「「イェア゛ア゛ア゛ア゛!!」」

皐「ふふふ。皆仲良いね〜♪」


どちらにしても、死亡フラグ。


END
 

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