リリカルなのは《短編》
□カレー。甘口。秋日和。
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林間訓練というのはどこの軍隊、自営組織でもあるありきたりなイベントである。
ここ時空管理局も、そういったイベントでは例外ではない。
「おいしい空気、緑の山々!いいわねぇ…」
「……ギン姉、なんかオバサン臭い」
「あらあら、ふざけた事を抜かすお口はこれかしら?スバル?」
「痛い痛い痛いからやめてホントマジで」
そんなわけで、管理局の魔導師は本日、林間訓練だった。
…
作者は林間学校を行わない学校に通っているので、林間学校の詳しい内容はわからない。
なので、林間学校の午前中、というか昼時は、ギンガがスバルを締め上げたとだけ書いておこうと思う。
すばらしきかなご都合主義。
楽しい時間はあっという間という、上手い言葉を使っちゃって時は夕食。
メニューはカレーである。
こちらもご都合主義、台所に立たせれば人類絶滅兵器を生成してしまう皐を初め作者の陰謀で一緒の班になった高人たちのカレー作りは、もはや神繋っていた。
「高人さん?玉ねぎとって」
「はいはい♪」
クッキングデストロイヤー皐を管理局最強三人組に任せておいた、高人ギンガコンビは無敵だった。
ピアノの旋律のように流れていく作業は、周りの目を釘付けにした。
そして素晴らしい二人のコンビネーション。
仲睦まじく、手際の良すぎる作業を進める二人の背景には、仲良し熟年夫婦の姿があったとか無かったとか。
そんな過程を終えて、完璧すぎるカレーは完成した。
…
「「「いただきまーす♪」」」
仲良く手を合わせ、皆一斉にカレーに口をつける。
「―――!」
「これは…!!」
「二人の料理スキルは化け物か……!?」
カレーを口に入れた瞬間感想を述べるなのはたち三人。
どうでもいいのだが、口に入れただけで料理の良し悪しがわかるのだろうか?
そういった感想は噛んで飲み込んでから言うものでは…とは作者の戯言だ。
「これは確かに…旨い。流石高人さん」
「ギン姉、流石……!!」
ティアナも満足そうだし、スバルなどギンガの手料理を食べて昇天しそうだ。
「良かった♪喜んでもらえて」
「本当、作った甲斐がありましたね」
友人たちが満足そうにカレーを食べる様子に、作った当人たちも嬉しそうだった。
「でも本当、おいしいですねこのカレー」
「うん。私このカレー大好きよ♪」
弾む口調で言ったギンガに、高人が悪戯っぽく聞いてみる。
「……私とどっちが好きですか?」
ふざけた質問だった。
ギンガは動かしていた手を止めて高人を見る。
そして一言。
「カレー♪」
高人、ハートブレイクの時。
「……そうなんだ。ギンガさんは私よりカレーが好きなんだ…。そうだよね私なんて悪運あるし貧相な顔出し…ああもう私は駄目人間だなぁ…。―――死のう」
「ちょ、待て待て待て待ってお願いホントフォーク首筋に立てないで!!」
本気で死のうとした高人をギンガは必死に止めた。
「馬鹿!!何やってるのよ!?」
「……だってギンガさんが…」
「あんなの冗談に決まってるでしょ!?何間に受けてるのよ!?」
「へ?」
ポカンとした高人に、ギンガは顔を真っ赤に染め上げて言い放った。
「高人さんの方が大好きに決まってるでしょ!!!」
夜の林間に、乙女の叫びが響いた。
「だから…。私を置いて死のうとしないでよ…」
「…ギンガさん」
「………馬鹿」
高人は立ち上がってギンガを抱きしめる。
細い体は、温かくて愛しかった。
「次変なことしたら…許さないんだから」
「はは…。肝に銘じときます」
苦笑を浮かべた高人に、ギンガは唇を突き出した。
「反省してるなら…。これで許してあげる」
「……喜んで」
微笑んで二人は唇を重ねた。
愛しい人の唇は、甘口カレーの味がしましたとさ。
「………あんたら、頼むから帰れ。特に高人」
突然キスをし始めた自分の同僚であり親友である高人に、サガミは恨めしそうに呟いた。
完全無欠の准将と呼ばれていた親友が懐かしい。
「あーあ。やってられん…」
サガミは自棄になって持ってきた酒をがぶがぶ飲む。
見れば他の魔導師たちも慣れたのか呆れ返り、なのは達だけが絶望した表情で昇天している。
楽しい林間訓練は、おかしな二人の所為でどうでもいい空気になっていた。
某月某日、林間訓練。
高人とギンガはどこでもラヴラヴで、高人とギンガの同僚はどこまでも哀れで、サガミの恋人はどこまでもお酒だった。
end