リリカルなのは《短編》

□凡夫な高人さん?
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「高にぃ!!」

六課で響くなのはの叫びは、無情なまでに無力で、高人の振り下ろされる一撃はなのはの元へ向かう。

「くぅっ!!」

《バリアバースト》

主の身の危険を感じたレイジングハートの防御壁がなのはと迫る高人の間に展開される。
だが、高人の能力の前にレイジングハートの防御魔法は無意味だ。
高人によって振り下ろされたイザナギが防御壁に触れた瞬間、瞬く間の内に防御魔法は中和され止まる事なくなのはに牙が剥く。

「あぁ!!」

吹き飛ばされたなのは。
だが、高人は追撃の手を緩めない。
即座にイザナギを構え直し、10個程の魔力スフィアを生成する。

「アクセル…バースト!!」

《アクセルシューター・シュート》

高人が構えたイザナギの刃を立てた瞬間、吹き飛ぶなのはに生成された全ての魔力スフィアが放たれた。

放たれた魔力スフィアの速度は常人では判断しきれない速度だ。
もちろん、なのはは吹き飛ばされた状態。瞬時に掛けられた高人の追撃を避けれる事は不可能だった。

だが

「レイジング…ハート!!」

《ディバインバスター》

吹き飛ばされた体制をなのはは立て直し、砲撃モードのレイジングハートを迫る魔力スフィアに向け、ディバインバスターを放つ。

「!!」

なのはの桁外れの砲撃は魔力スフィアを打ち消した。しかし、なのはの狙いはスフィアではなくイザナギを構えた状態の高人だった。
まっすぐ伸びるディバインバスターは、高人を捉えていた。

「これで…」

確実な手応えを感じたなのはは、ぐっとレイジングハートを握る。
だが…

「その程度…!」

高人はディバインバスターが直撃する直前、砲撃に向かって片手を振り出す。
その瞬間、ディバインバスターは四方に拡散し高人に当たる事は無かった。

「そんな…!?」

「…イザナギ」

《了解、マスター。》

驚きを隠せないなのは。自分が全力で放った魔力砲撃を片手で受け払われたのだから。
しかも、高人は再びイザナギを構え直しているではないか。

[魔力が…凝縮されて…!?]

「真義、無天楼…神凪!!」

なのはがイザナギの切っ先に高人の魔力が凝縮されて行くのに気づいたと同時に、高人からの閃光がなのはの眼前を包んでいた。









えぐられた大地。
焼き払われた草木。
そして…酷く傷ついたバリアブルジャケットのまま、なのはは地面に伏せていた。

「いつつ…」

「大丈夫ですか?なのはさん」
しかし、なのはは頭に何故か柔らかい感触を感じていた。
それもその筈、なのはは高人に膝枕されていたのだから。

「高にぃ…?」

「全く…なのはさん。模擬戦はもっと気を抜いてやらないと隊舎が持たないじゃないですか」

気がついたなのはにため息をつきながら、高人は優しくなのはのおでこを撫でる。

「あぅ…だ、だって…皆が高にぃは私より弱いって言うから…」

「…は?」

ボロボロになりながら、顔を赤めながらも言い放ったなのはの今回の模擬戦理由に高人はポカーンとした。

「別に…そう言われてもいいんじゃないですか?」

「ダメだもん!!確かに、私も練習したし自信はあったけど…昔から高にぃにはどうやっても勝てなかったもん!」

「…は、はぁ」

なのはの話によれば、六課のメンバーで食事をしていた際、小耳に挟んだ高人弱小説。

なんでも、いつも予算課でモニターとにらめっこしている高人をティアナやスバル世代の魔導師達が弱いだとか、仕事だけできる凡夫だとかと噂を流しているらしい。

それを聞いた六課のメンバーがキレない訳がない。まず高人と一番模擬戦しているシグナムとヴィータが激怒。高人無敗伝説を肌で痛感している二人は問答無用で昼食時のほんわかムードをレヴァンティンとグラーフアイゼンでぶち壊して行く。
ついでにリィンやはやて、ヴォルケンリッターで一番怒らせてはいけない人、シャマルさんまで加わって今まで見たことない般若の形相(食堂料理長談)で魔導師を引っ張りだして行ったらしい。

どおりで廊下の奥から叫び声や悲鳴が数十時間に渡って響いていたんだな。

てゆか…

「だからって、いきなり予算課に来たと思ったら背後からスフィアぶっ放しますか?」

「そ、そうでもしないと高にぃ戦ってくれないでしょ!?」

そう顔を赤くしながら弁解するなのはを見ながら高人は再び深く肩を落としたのだった。



言うまでもないが、なのはの呼びかけによって一部始終モニターで戦いを見ていた管理局の魔導師達は、翌日から高人に何故か敬語を使うようになったとさ。



END

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