リリカルなのは《短編》
□安眠方法、教えます
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唐突だが、こんな経験をしたことはないだろうか。
夜、電気も消してさぁ寝ようと毛布までかぶったのに急にトイレに行きたくなることだ。
寝ている途中で起きてもあれだからと、階段の電気をつけ、トイレまでいき、そこでも電気をつけて用を足す。
しかし、部屋に戻ってみるとさっきまで暗闇に目が慣れていたのに今は全く何も見えない、という誰でも一度はありそうな経験だ。
まぁ、各々シチュエーションは違うだろうが、こんな感じだろう。
つまり今、自分はそういう状況だ。だからといって特に困っているわけでもないのだが。
感覚を頼りにベッドまで戻ると、睡魔が戻ってきた。少し寝づらいな、と
寝返りを打ったのだが・・・狭い。
さっきまで普通に寝返りを打つスペースぐらいあったはずなのだが。
何故こんなに狭い。
自分が急成長して体が大きくなったわけではない。というかもう体は成長しないだろう。
友人であるサガミに身長が負けているのがちょっと癪だと密かに感じているが。じゃあ、何かがあるとしか思えない。
「あなたを私のモノにするチャンスが再びめぐってきました♪」
と言って満面の黒笑みを浮かべたシャマルが毛布の中から出てきたら卒倒ものだ。
あぁ…鳥肌が立ってきた。
とにかく何があるのか確かめなければいけない。
もしや、獣化したザフィーラさん?とも思ったがさすがに自分のベッドで寝返りを打つスペースを奪うほど大きくない。もし裸のザフィーラが横たわっていたならシャマルと同じく卒倒ものだが。
がしかし、そう思わなければシャマル説が正論になってしまう。"獣化した"ザフィーラさんであることを祈るのみだ。
恐る恐る触ってみるが、この感触は・・・布?
一体何なんだ、と恐々としながら手を上へと滑らせていく。すると少し山形になっている部分があった。
掴んでみると、柔らかい。
もう一度掴んでみる。
やっぱり柔らかい。
程なくして私の頬に何かがぶつかった。
痛い。
いい加減に電気をつけることにする。最初からそうしろよ、自分。
自分のベッドの上にいたのは、居候するこの家の主であるはやてだった。
「は、はやてさん!?」
私は驚いた。
それはそうだ、ベッドから見えたはやての顔は赤面していたのだ。オプションとして、怒のオーラとシュベルトクロイツも背後からでているが。
「はやてさん…どうして私の部屋に?」
当然の疑問だ。こんな場面を他の守護騎士に見られてしまえば、私がはやてを襲ってあんなことや、こんなことを・・・って言う言われもない避難と暴力の嵐が来ることは間違いないだろう。
とにかく冷静にならなければ。
落ち着け自分。
「…高人のえっち。」
「へ?」
はやての口から出てきたのは質問の答えではなかった。
私が・・・えっち?
ま、まさか・・・さっき掴んだ、もとい揉んだのは・・・。
「悪かったな…ウチ貧乳で…。」
「すいません!はやてさん!まさか胸を揉んでいたとは…ごめんなさい、この通りです。本当にすいません!」
土下座をしながらそう謝罪する。
そりゃ、赤面+怒のオーラを出すわけだ。まぁ、控えめながらに感触は良かったが。
「もういいから。顔を上げてぇな。」
恐る恐る顔を上げてみると、はやてはいつもの無表情に戻っていた。ふぅ、もし許してくれなかったらどうしようかとちょうど考えていた所だった。
助かった。
「あ、あのはやてさん。」
「なんや。」
「あの、先ほども申しましたが、なんで私の部屋に居るんでしょうか?」
何故か顔が強ばる。
「悪いか?」
「いやいや、滅相もございません。」
質問の答えになってないんですが、はやてさん…。
「寝付けなかったんや。」
へ?
「大切やと思う人と一緒だと安心して寝られる、てシャマルが言ってたから…な。」
「そ、その大切な人というのは…」
「文字通りの意味やで。」
そうか。
つまり、はやてさんにとって私は大切な家族ということか。
率直に言おう。かなり嬉しい。
足手まといだと思われていたらどうしようかと結構ドキドキしてた自分が10秒くらい前まで居た。
「じゃ、一緒に寝ますか。」
「…うん♪」
そうしてやっとベッドに戻ることが出来た。
ベッドは当然2人用に作られているわけではないので、窮屈だったが構わない。はやての私への認識がやっとわかったんだから。体が触れあっているのでそれなりに体の方は反応してしまうが。
結局、あまり寝れなかった。
次の日の朝食を作りながらで私は悩んでしまう。はやての眠りに落ちる前の一言によって。
「責任はとってもらうからな。」
責任って何?
度々、はやてが高人の部屋に来るようになったのは言うまでもない。
END