ガンダム00@

□巡り巡ってまた戻る。
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今日は何かが違った。
いつもと別段変わっているわけではないのだが、でもやはり何かが違う。

ティエリアがそんな胸騒ぎを感じながら格納庫へ向かっていると見慣れた後ろ姿が見えた。その黄色の制服はどことなくふらついているようだった。
「・・・ミレイナ?」
声をかけるとミレイナが危うい足取りで振り返った。明らかに顔色が悪い。
「・・・顔色が悪いぞ、大丈夫か!?」
「アーデさん・・・なんだか凄く寒いんですぅ・・・体も、だるいし・・・」
そう言った瞬間、彼女の足の力が抜けた。
「ミレイナっ!」
抱きとめたミレイナの体に力は無い。どうやら気を失ったようだった。



ミレイナの部屋。ベッドでミレイナが寝息をたてて寝ている。
アニューにもミレイナの様子を診てもらった所、やはり風邪で熱がでたようだった。連日の忙しさでまともに休んでいなかったのかもしれない。
そのため、今は薬を飲ませてからベッドで寝かせている。その隣でティエリアも椅子に座ってミレイナを見守る。


「無理がたたったのか・・・それに気付いてやれないなんて、僕は・・・っ」

ティエリアの中には後悔の念があった。

何故こんなになるまで気付けなかったのか

特にミレイナは疲れていても「大丈夫です」と隠すタイプなのだ。その本当の心の声に誰かが気付いてやらなければならないのに

―自分は気付かなかった。

「・・・代われるものなら代わってやりたい」


そう呟き、ミレイナの頭をそっと撫でた。
先程取り替えたばかりの濡れタオルが冷たさを失っていることに気付いてまた取り替える。


その時、今までの静けさを突き破るように艦内放送が入った。
『敵襲です!マイスターは出撃の準備をしてください』


すぐに行かなければ、と椅子から立ち上がりかけて、もう一度ミレイナを見た。
「ミレイナ、行ってくる。・・・今度こそ必ず、守るから」
半ば自分にも言い聞かせるように言い、ミレイナの頬に軽くキスをした。



四年前にした約束。それを守れずに泣いたあの日。

二度とあのようなことは繰り返さない。―もう二度と



ミレイナに背を向けて部屋を出た。彼の目には、もう迷いは無かった







「アーデさん!お疲れ様ですぅ」
戦闘の後ティエリアが部屋へ行くと、ミレイナはすっかり良くなっていた。驚くべき自然治癒力だ。
「ミレイナ・・・大丈夫なのか!?まだ半日しか経ってないぞ」
「アーデさんが看病してくれたからもうピンピンです!」
「・・・良かった・・・でももう少し寝ているといい。」
「はいですぅ」

念には念をともう一日寝かせておいたが、熱も下がっていたためミレイナはずっと喋っている。
その騒がしさが心地良く、ティエリアは微笑んだ。










だが更にその数日後、今度はティエリアが風邪をひいた。風邪をひいた事がなかったため、最初はただだるいだけかと思っていたがミレイナに指摘されて初めて気が付いた。ミレイナの冷たい手が額に触れる。
「やっぱり!風邪ですよアーデさん」
「ん・・・そうか」
「そうかじゃないです!凄い熱なんですから部屋で寝てるですっ!」
ミレイナに腕を掴まれ、半分引きずられるようにして自室へ連れていかれた。



ベッドに横になったティエリアを側に置いた椅子に座るミレイナが見つめる。
「・・・ごめんなさいです。きっとミレイナが風邪うつしちゃったです」
ミレイナがすまなそうにうつむく。
「僕は大丈夫だ・・・君は部屋に戻るといい。また風邪をひいてしまったら大変だ」

そう言うと、ミレイナは頬を膨らませた。
「ダメです!風邪をうつしてしまったのですから、ミレイナには看病をする権利があるです」
「・・・だが」
「反論は即却下です!」
「・・・ミレイナ、僕の言うことを」
「駄目ですっ」
ティエリアが何か言おうとする度に、ミレイナは怒ったように頬を膨らませた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」

説得するのを諦めて黙り込むと、そのまま沈黙が流れる。
その間ミレイナは両手を膝に置きながらずっとティエリアを眺めていた。



ティエリアが気が付くと翌日の早朝。
昨日よりはずっと体調が良く、熱も下がったようだ。
ふと横を見ると、ミレイナが昨日のように椅子に座ったまま、ティエリアのベッドに顔を埋めて寝ている。きっと一晩中看病してくれていたのだろう。ティエリアの額の上には濡れタオルがあった。

「ありがとう」

ミレイナには聞こえないその言葉は、優しさで満ちていた。
 

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