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□無邪気な笑みと無邪気な企み
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ブック@に入ってる「離さない」の続きらしきものを今更書いてみました。
先にこちらを読んでからこのページを読まれることを推奨致します。


ちなみにこの話も続くかはわかりません(え?)

















「あ、また会ったです!」

ふと甲高い声がして振り返ると、いつかの栗色のツインテール少女が満面の笑みでこちらを指差した。
誰にも会わないように気配を探っていたのにおかしいな、
とリジェネは小首を傾げる。

「偶然にしては出来すぎてるね」
そう言ってかまをかけてみるも、ミレイナは不思議そうにするだけで何の反応も示さない。どうやら本当に偶然らしい。
「またアーデさんに会いに来たですか?」
一回会っただけ、しかもその時は思いきりからかってやったというのに彼女は恐れを抱いているようには見えない。
度胸がいいのか、はたまた天然なのか。ミレイナのような人間に余り触れていないせいか、彼女はとても興味深い対象だった。
「でも困ったな、僕と話している所をティエリアが見たらきっと彼、怒るだろうねぇ」
「大丈夫です!ミレイナが何とか許してもらうですから」
ミレイナはころころと笑う。人間のこんなに汚れのない笑顔は見たことが無かった。
ましてや同類のイノベイターだって、こんな笑顔を作らない。本当に人間は不思議だ。
「それにしても、何で君は今僕に声をかけたんだい?仲間を呼んでくれば良いのに」
そう疑問をぶつけると、ミレイナは複雑そうな表情をする。
「うーん・・・なんででしょう?」
「自身でもわからないのかい?」


「・・・多分、ほっとけないんですぅ」
数秒置いてぽつり、と彼女が呟いた言葉に不覚にもリジェネの瞳が丸くなる。いきなり何を言い出すんだ。僕は敵なのに、
「最初レジェッタさんに会った時・・・何て冷たい目をしてるんだろう、って思ったです。
でも、今見てわかりました。『冷たい』んじゃなくて、寂しそうな瞳をしてたんですね」
あの吸い込まれそうな程冷たい瞳は。

だから放っておけなかったのだ。


「ティエリアと同じ顔だからじゃなくて?」
てっきり彼と『同じ』だからほっておけないのだと思っていた。
彼女の大好きなティエリアと同じ顔だから。
そう言うとミレイナは微笑んで、自慢するように両手を腰に当てた。
「分かってないですぅ!同じ顔でも中身は別人、ミレイナならたとえ髪型が一緒でもアーデさんがどっちかなんて簡単に判ります」
何故かその言葉を聞いて、ティエリアが羨ましくなった。ささやかな嫉妬心。
ミレイナの視線に合わせるために自然と中腰になる。
「・・・ふうん。おんなじ顔なのに、絶対見分けられると?本当に?」
「本当ですぅ!」

疑ってみせると、彼女は不機嫌そうに頬を膨らませた。その面白さに耐えきれず、笑いだす。
「君、面白いよ」
「え?」
ミレイナが思いもよらない言葉にきょとんとしていると、リジェネは立ち上がった。元々の目的も果たせなかった上にこんなに長居してはいけない。

「・・・まったく、君が話しかけて来たから本来の目的を忘れちゃったじゃないか」
棘のある言い方だがその顔には笑みが浮かんでいる。


―だけど、思ったより楽しませて貰った。
そんなに見分ける自信があるのだったら、彼女の知らぬ間に入れ替わっても面白いかもね。

微笑みの下で無邪気な企みがうごめいたことをミレイナは知らない。

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