翻訳の5題

□belles infid'eles
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ティエリアが食堂で夕食を摂っていると、隣の椅子に誰かがやってきた。
誰かと思い横を見るとミレイナだった。彼女は二つに結んだ髪を揺らして微笑む。
「アーデさん、お疲れ様です!」
「ああ。君もな」

ミレイナは本当に良く笑う。
それでいて辛い、とか悲しい、とかいう感情は笑顔で誤魔化すのだからこちらとしてはたまったものじゃない。


ちゃんと言えばいいのに。
正直に言ったって別に嫌いになったりなんかしないのに。






「うん、美味しいですぅ」
エビフライを頬張り笑うミレイナを見て、何か違和感を感じた。

いつもより笑顔がぎこちない。無理をして笑っているようだ。
「・・・・・ミレイナ」
「なんですか?」
こちらを見る顔もやはり笑っている。
だが違うのだ。僕の見たい笑顔は心からの笑顔であって、気を使って無理につくる笑顔じゃない。

「言ってみろ」
「・・・・・・・え?」

「気にすることはない。言ってみろ」



「アーデさん・・・・・・」
笑顔が消えた。今にも泣きそうな顔をしてティエリアを見る。
「自分に嘘をつくな。辛いのならば、泣けば良い」

「なんで・・・・・わかったですか?」
ミレイナの目が涙でいっぱいになった。ガラス玉のような大きな雫を零しだす。
「君の顔を見ればわかる」


彼女の顔を見れば、その表情が何を意味しているかなんてすぐわかる。
それがなんだか嬉しい。
ティエリアはその小さな体を抱きしめた。


しばらくしないうちに泣き声が聞こえ始める。
泣き止むまで、ティエリアは頭をなでてやることにした。


何があっても僕がいちばんに気づいて、癒してやりたい。



君の笑顔が見たいから。
一緒に笑っていたいから。

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