血色の薔薇
□崩れゆく日常
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「じゃぁ……。俺がヴァンパイアハンター試験受かったら、その……。もっかい考え直してくれない?」
シンは私の事を真っ直ぐな瞳で見つめてくる。
何があってもこの瞳だけはは揺れない。
揺るがない信念。
強い心。
誰にも負けない優しさ。
シンは強い。
そんなシンを私は凄く尊敬してる。私も、強くなりたい。
『しょうがないな…。わかったよ』
ついつい首を縦に振ってしまった私。
シンの告白を96回やけになって断ってた私も居たわけだし。村の女の子達からのいた〜い視線に覚悟しておかなくちゃいけないな。
「リフ、何笑ってんだよ!?」
無意識にも笑っていたらしい。
あはは……。
『え?村の女の子達に覚悟しておかなくちゃなーって』
「それって……。」
突然シンが下を向いた。
……。
暫しの沈黙。
『シンどうした「リフ〜!大好き〜ッ!!!!」
バッ
『ッ!?』
突然私に飛び掛かってきた。シンは私より背が高いからシンの腕の中にすっぽりおさまってしまう。しかも胸に押し付けられて息ができない。
『〜〜ッ。シン!!』
「ん〜?」
『ん〜?……じゃ無いの!!恥ずかしい!苦しい!』
「あぁぁ〜〜ッ!!もう超かわいいッ!離したくない……。」
……!? なにを言っとる。
苦しいんじゃい!
抱きしめる力がより一層強くなったし。
…と言うかスリスリやめ!!!
そう、シンは今私の頬に自分のほっぺをスリスリしている。こればっかりは私もお手上げ。
最早恥ずかしいを通り越した。
もう、下手な抵抗はやめにしよう。
シンは……。強いけど犬だ。
尊敬してるけど。
犬だ。
『シン……。離してくれないとさっきの話、なかっ「ハイッ!!離れます。」
そう言うと高速で私から離れた。
そしてシンは私にとても忠実な忠犬ハチ公ならぬ忠犬シンだったりもする。
『……シン。お手。』
私は右手を差し出す。
これは一度やってみたかった。
「はっ!?」
あぁ、やってしまった……。
私はついに自分の世界から飛び出したらしい。ゴメンよ、シン。
思わず手を引っ込める。
『ゴメン、つい…』
「ん。」
するとシンが手を差し出す。
しかも ぐーで。
『何?』
「何?じゃねぇ。お手だろ。お手。どっからどうみても。」
私はノロノロと手を差し出す。
ぽふッ。
……とは言わないが忠犬シンによるお手が成立した。
かと思いきや私の手をぎゅっと握った。
コイツ……。これが目的だったのか。
「んーじゃ、帰りましょー」
私達は今いる教会の側の丘から帰路へついた。
空は青からオレンジに変わり、真っ赤な色へと変化を遂げている。
ゆっくり、ゆっくりと。
私達の人生の転機まであと少し。
カウントダウンはもう既に始まっていたのだった。