tresure&present
□頂き物
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辺りが暗闇に沈む中。
煉は、灯籠のほのかな光が灯された廊下を歩いていた。
漆黒の髪は歩く度にさらりと揺れ、赤色のメッシュが光を受ける。
しん、とした廊下に、煉の静かな足音だけが聞こえる。
やがて、見慣れた深茶の扉が見えてくると、煉は真っ直ぐそこに向かった。
ガチャ…と音を立て扉を開く。
部屋にいるだろう少女は、もう眠っているだろうか。
静寂だと思っていた室内には、テレビの音が響いていた。
煉は中央にあるソファーに近付く。
背もたれに手を置き、中を覗き込むように体を伸ばした。
そこにいるのは、愛しい人。
こちらに背を向けるように、息を立てて眠っている。
寒そうに体を丸め、その背は規則的に上下している。
煉はソファーをまわると、テレビの前に置いてあるチャンネルを取り、電源を消した。
ブツッ──と音を立て、部屋が静かになる。
そしてその場に座ると、肘をついて鈴の寝顔を眺めた。
眠っているときの表情は、幼さを感じさせる。
小柄な体は折れそうなほど弱く見えた。
寝息を立てる鈴の髪を撫で、首筋に流れる髪を取り、軽く口づけた。
そのまま手を移動させ、ほのかに赤い頬に触れる。
ぷに、と予想以上の柔らかさが面白い。
そのとき、鈴の瞼が震えた。
睫毛が儚げに揺れ、うっすらと目を開ける。
その瞳は、ぼんやりと目の前にいる煉を見ていた。
「───…?」
赤い唇から、かすれた声が漏れる。
聞き取れなくて、煉は更に顔を近づけた。
再び、鈴の唇が開く。
「れ……ん?」
煉は内心驚きつつも、顔を離す。
「……あぁ、俺だよ」
そう答えてやれば、ふ、と鈴の表情が緩む。
寝ぼけているとはいえ───初めて見せる無防備なその表情に、煉は目を丸くした。
鈴は眠たげに目を細めると、静かに瞼を閉じた。
聞こえてきたのは、安らかな寝息。
煉は、はぁ、と息を吐き出すと、その寝顔を見つめた。
あの表情───…寝ぼけている状態でなく起きているときに見せられれば、理性が決壊しそうだ。
今も、危うかったというのに。
「…困った子だ」
その呟きは、眠っている少女には届かない。
そして───…
目が覚めた鈴が、お仕置き、と称し彼から熱い口付けの嵐を受けたのは、翌朝の話。