tresure&present
□2500キリリク
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青い空の下。
賑やかな大通りには永遠と繋がる人の波。
道の両サイドには食べ物や雑貨を売る露店。
時々美味しそうな香りが鼻を掠める。
今日はシンと買い物に来た。
『はぐれないように』とシンが私の右手に指を絡めて手を引いていたというのは言うまでもない。
……そう、引いていた。
ついさっきまでは!!
奴は少し手が離れただけで忽然と姿を消したのだ。
こんな人込みに私一人置いて何処かへ消え去るなんて!
いくら辺りを見回してもあの赤い頭は見つからない。
何が『はぐれないように』だ。
薄情者ぉぉぉーー!!
あんな派手な色した髪ならすぐに見つかるはずなのに。
無駄にトマトみたいな赤い頭しやがって。トマト野郎が。
これだからトマトは嫌いなんだ。
何だかグシュグシュしてるし、背中がぞぞぞーっとする酸味があるし。
勿論ミートソースは食べれる。
なんてったってトマトの原型が留めていないから。
それをあのトマト野郎にからかわれたことがある。
忌まわしきトマト事件。
そして目の前に差し出された赤いもの。
それは赤い赤い
ト マ ト
……とまと?
顔を上げればトマト片手に笑顔を浮かべたおじさん。
「おじょーちゃん!持ってきな。」
おじさんの前には新鮮そうなたくさんの野菜。何でこれまたトマトを……?
「いいからもってけ。金はいらねぇよ!」
おじさんはそういってニコニコしながらトマトを私に向かってほうり投げた。私が渡されたトマトをじーっとを見つめる。
「ん?どうした、じょーちゃん。さっきまで歩きながらトマトトマトって言ってたじゃねぇか。」
私はそんなに不思議そうな顔でもしていたのだろうか?
『……そうでしたっけ?』
やってしまった。口にだしていたなんて……。
おじさんにありがとうと言ってトマトを頂いた。一先ず家に持って帰ろう。
そう思って通りの人並みに沿って歩き始めたとき。
――赤が跳んだ。
青い空によく映える。
詳しく言うと、トマト頭の人間が何かに吹っ飛ばされたかのように人並みからこんにちはしたのだ。
それはちょうど噴水のある広場のほうだった。
瞬間的に見えたあのトマト頭は完全にシンな訳で。
この辺の街じゃそうトマト頭は見かけない。
もしや、ヴァンパイア……!?
その考えが過ぎった直後には広場目掛けて走り出していた。