marionnette
□Marionnette
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――ある日のこと。
少年は人形を作りました。
大きな大きな桃色の瞳が印象的な女の子の人形です。
少年はその人形といつも一緒に過ごしました。
なぜなら、少年は他に家族がいないのです。
少年にとってその人形は唯一の家族でした。
毎日毎日、少年は語りかけるようにして人形に話しかけ、平和でゆったりとした幸せな日々を過ごしていました。
しかし、一人で居ることの退屈さ、寂しさは日に日に募っていくばかりでした。
その人形だけでは少年の不安を消しきれなかったのです。
少年が人形といる時間は次第に減っていき、しまいにはその人形を戸棚の奥へとしまい込むようになりました。
真っ暗な戸棚の中、人形は思いました。
――人間になりたい。
人形は話しかけられる時に少年が見せる無邪気な笑顔、空をそのまま映し出したかのような綺麗な青い瞳が細められるのが好きだったのです。
何年も何年も、人形は戸棚の中に置き去りのままでした。
少年が今どうしているのかも知る由もありません。
それでも人形はずっと願い続けていたのです。
――少年が戻ってきてくれるように、またあの笑顔が見れますように。
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