突発的短編集
□バレンタイン
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部屋中に漂う甘い香り。
本日キッチンは男子禁制。
──シャカシャカシャカ
『……あ、チョコ焦げた。』
はい。バレンタインです。
何故かチョコを溶かしていたら焦げました。原因は不明です。
「リーフ−っ。まだ入っちゃダメなの〜?」
閉め出しをくらっているシンが叫ぶ。少しは待ってられんのか、ワンコめ。
私の推測によると恐らく奴は、キッチンとリビングを隔てるドアに寄りかかっていると思われる。閉め出したときからずっといるんだよ。閉め出し開始から早3時間。私は料理得意な方じゃないからもう少し時間がかかるはず。
ずっと待たせておくのは申し訳ないので
『さっき神父様がシンのこと呼んでたみたいだけどー。』
……って言ってみた。
呼んでいたことは事実。
シンには少しの間外に出てもらうことにしよう。
***
『よし。出来た。』
ラッピングも綺麗に済ませて完成した。我ながらよくできたかな。
「たーだーいーまーッ。」
なんというグッドタイミング。
「あ〜、いい匂い!」
早くくれと言わんばかりにいつも以上に目をキラキラさせるシン。耳と尻尾が見えたような気がする。この仕草がキュンときていることは本人には言わないつもり。
何て言ったって恥ずかしいもん!!
『……。ハイ、これ……。』
シンはありがとう、と言って受けとると直ぐにラッピングのリボンを外す。
──カサッ
ドキドキしながらうつむいて次の言葉を待っていると
──チュッ
『……ッ!?』
ほっぺにキスされたッ……!!?!
ビックリして彼の方を見上げる。
「ありがとう。」
シンはとても優しい屈託の無い笑顔で微笑んでいた。笑っているシンは可愛いと思う。そんでもって格好いい。
その笑顔にやられた私の顔が真っ赤になったのは言うまでもない。
(しかもそのあとシンが何時ものように抱きついてきた。)
おわり。