小説:自重シリーズ
□翅の欠片†えくすたしー!
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『固茹卵、あるいは半熟卵』
「俺って、正直薄っぺらいのかな?」
突然、彼がそんな事を言い出したのは、私と彼の自室に程近い、基地内の廊下の途中だった。
「意味が分からないのだが?」
「何と言うかさぁ…『大好き』とか『愛してる』とかだけじゃ、アントちゃん正直不満じゃねえか?上辺だけみたいでさ。」
彼は困った様な、考え込む様な表情で私に問いかけた。
「別に…私は気にもならないがな。」
彼が、五月蝿い程に私へ好意を寄せている事は既に理解している。
そうで無ければ、彼との交わりの誘いに毎度の様に乗ったりはしない。
「でもさぁ…時々、不安になんだよ。」
彼が私の顔を見つめる。
「…俺、やっぱしバカだからさ、どんなに言葉に出したって、態度や行動で示そうなんて思ったって、アントちゃんに伝わらない…穴さえありゃ誰でもいい訳が…いや、いいんだけど…ん?それだと、あ、ありゃ?」
彼は首を傾げた。
どうやら、何か深刻な事を考えている内に、問題の整理が上手く行かず混乱した様だ。
思わず私の口元が歪んだ、と思いきや、引き攣る様な痛覚が走る。
「ん?どしたのアントちゃん…って、アントちゃん唇カサカサなんてモンじゃねえぞこれ!もー…時々何か塗っとけって…」
彼が私の頬に手を伸ばす。
「必要無い。」
「またまたそんな事言って…んじゃ、ちょっとマシになる様に応急処置を…」
そう言って、壁際に追い詰められた私の顔を両手で挟み、食む様な接吻けをした。
「ん………」
『抵抗する』という選択肢は初めから頭に無く、ただ小鳥の戯れの様な接吻に混じり、柔らかく鋭い舌先が乾燥しかさついた唇を潤す行為を無心で受けていた。
一度、名残惜しむ様に唇を離すと、彼の指先が濡れた私の唇を、輪郭をなぞる様にして愛撫する。
「アントちゃんは唇も感じちゃうからなぁ…と。後はと、こいつはおまけに…」
今度は、私の唇を押し開き、歯列をなぞり、その奧の口腔へ舌を差し込んで来た。
反射的に、私も彼の舌に自らのそれを絡ませ、唾液も何もかも深く交わる。
両腕は自然に彼の背中へ回り、爪先で立ち、腰を彼の身体へ緩く摺り付ける。
下腹に重い熱が溜まり、欲望が緩やかに頭を持たげる。
布地越しに感じる彼の感触が、私の〈雄〉の部分を慈しみ育み、膨張させていくのを感じた。
透き通った糸を引いて、唇を離す。
「うん、こんなモンだろ。…それにしても、アントちゃん?」
未だ、夢見心地で彼に腰を寄せる私の意識が急に現実へ引き戻された。
「ん、…な、何だ?」
彼は、一旦距離を取って薄笑いを浮かべた。
「この俺様が割と真剣に恋人との付き合い方について悩んでたのに、アントちゃんってば一人でもうこんなに…」
彼の伸ばした手が私の膨張した下腹部に触れる。
「いーやらしーんだー。」
五指が膨らみを抓む様に、輪郭を露にする様に優しく触れる。
思わず頬が燃える様に紅潮するのを感じたが、気にせず私は言い放った。
「こんな…こんな他人に見られかねない場所で、あんな事をするお前が悪いのだろうが!…自分の気持ちが、本気では無い様に伝わっているかも知れないと不安に思っているのだろう?だったら…」
彼の視線から顔を反らし、行き場の無い腕を組んだ。
「普段通りに伝えればいい。不安も…その、お前の、本物の…愛情もだ。」
「アントちゃん…やっぱ、アントちゃん、ヤサシイ…」
向き直った私の強化服のファスナーを、彼が下まで開ける。
はだけた胸の赤い飾りを指と舌で転がして、時折強く抓み上げ、時には指で強く押し込んで円を画く。
「アントちゃんの胸は最高だなぁ…薄くて柔らかいのに、しっかりしてるし…」
彼が耳元で囁く。
思わず声が出そうになる喉を抑える。
錆びた刃で四肢を切り取られようが、機銃の乱射で全身に穴を開けられようがまず上がらないであろう絶叫が、喉の奥から洩れそうになる。
脊髄を駆け上がる悦楽が思考を、理性を次第に焼いていく。
指を胸から腹へと緩やかに下ろし、ファスナーを一番下まで下げると、既に怒張し、先端を潤ませた〈雄〉の象徴が溢れる様に露になった。
「へへへ、すぐにスッキリさせてやるから、大人しくしてろよ…」