玉響〜symphonia〜

□Road of… 番外編
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嫌な予感的中。

寝間着を脱がされそうになり、必死に胸元のあわせを押さえる。

以前から戯れのようにセクハラをされるのだが、最近特にタチが悪い。
本気で身の危険を感じる。

「や、やめなってば!」

「ヤダー」

ベッドの上にまで乗っかってくる。
冗談じゃすまない。

「…しいな」

耳元で甘く名前を呼ばれる。

「…ッ」

そうされると弱いのを知っていて、やってくるのだ。

「愛してるぜぇ?」

指の力が抜けてくる。

そっと舌が耳をなぞった。

もう、ダメだ…。

身を固くした時、足音が近付いてくる音が聞こえた。

反射的にゼロスの体を押しやる。

「しいな…?」

顔を確認すると上目遣いにこちらを見つめていた。

「おねだりしてくれちゃうの?」

期待して笑うと、平手打ちが飛んできた。

「バカ言ってんじゃないよ!」

顔を真っ赤にして、しいなが叫ぶ。
直後、ハッと気付き口をつぐんだ。

何か変なことにゼロスも気付く。

しいなの纏う空気が一気に任務の際のそれに変わる。

「…誰か、来たか?」

小声で聞くと、しいなの細い指が口元に持っていかれた。

「しっ!………」

はりつめた空気。
しいなは足音を分析していた。

「………ああ。なんだ」

空気が和らいだ。安心出来るくらいの数だったらしい。

「どうした?」

「プレセアとリーガルだね」

「へ?」

「もうすぐ来るよ」

コンコンッ

間もなく、ノックの音が響き、ゼロスが出迎えに行く。
その間にしいなは、乱れていた寝間着を直し、気持ちを落ち着かせた。

木のドアから入って来たのはやっぱり、リーガルとプレセアだった。

リーガルはゼロスの教育係、プレセアは城のお庭番で、別荘襲撃の際も共に戦ってくれた信頼出来る人たちである。

「しいなさん、傷の具合はどうですか?」

プレセアが近づいてきて尋ねる。

「だいぶ良くなったよ」

「それならいいです」

普段あまり表情が変わらないプレセアだが、微笑むととても可愛らしい。

「心配してくれてありがとね」

「いえ。少しずつでも良くなってるなら、嬉しいです」

実は怪我の治療のための薬などはプレセアがちょこちょこと運んでくれている。
今日も、いくらか持って来てくれたらしい。

「いつも助かるよ」

「いいえ。お役に立てて…良かった」

女性が二人仲良く話している時、男性たちも話をしていた。

「かなり良くなったようで何よりだ」

「ま〜ね〜。俺様、精根尽くしてしっかり看病してるからねぇ。良くならないとやり甲斐ないっしょ〜?」

「まぁ、そうだな。しいな、腕を見せてくれるか?」

「え?ああ…」

寝間着の袖を捲りあげて見せる。

「しっかり処置しているな」

「ああ。ゼロスが色々手伝ってくれてるからね。背中とか、手の届かないような所には薬塗り込んでくれるし」

「そうか。皇子もきちんと協力しているのだな」

「まるでいつもはやらないような言い方だな?あ、あと俺様もう皇子じゃないし」

「そうだったな。しいなもだいぶ良くなったが、これからどうするつもりで居るのだ?」

リーガルがゼロスに確認する。
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