玉響〜symphonia〜

□wine and dine
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柔らかな唇が触れた。

「しいなっ!?」

「…たまには、あたしからも、いいかなって」

そう言って、照れたように笑う。

これはもう、据え膳食わぬは…ってやつ!?

酔ってんだろうなとは思う。
どうせ普段は触らせてくれるのもなかなかなんだし、この機にいただいちゃっていいですか!?

いや、でもなぁ…

「やけに積極的じゃん。しいなちゃん。どうしたのよ?」

「ん?よく分かんない。でも、なんかそうしたい気分なんだ。時々は甘えていいって言ってくれたじゃないか」

「そりゃ言いましたけどねぇ…」

「…嫌、だった?」

上目遣いでそりゃないって…

「あ?いや、そんなことねーよ」

「ホントかい?良かった」

しかもはじけたように笑って…

「…ッ!」

かわ…可愛い……!!
こりゃもうやっぱGOサイン!?遠慮しないぜぇ?

「しいな…」

いただいちゃうぜ?俺様、本気モードで行っきまーす。

肩を抱き、呼びかけたが、視線が捕まらない。

「綺麗…だね」

「へ?」

「髪。羨ましい…」

そう、しいなの視線は俺様の髪。
指に絡めて遊び出した。

「サラサラ。全然絡まない…いいね。細いし柔らかいし。手入れが行き届いてる感じ」

「え?そりゃ、まあねぇ…」

「どうやったらこんなになれるんだい?」

指に絡めるのが楽しくなったみたいで、ひたすらいじりながら聞いてくる。

「どうって…普通にシャンプーとトリートメントと……」

「高いの使ってんだろ?」

「そうでもねーよ」

「あるだろ?…いい匂い」

毛先を触っていた指がどんどん上にやって来て、つむじの辺りを撫でる。
うっとりとした目つきで、軽く頭に鼻を近付けて…

だ、大丈夫だよな?臭わないよな?
朝、洗ったし。

「…薔薇?」

「ん?多分…」

「似合うね」

…ホントにしいなちゃん、どうしちゃったんでしょ?

しかしここでペースを乱されるのは俺様らしくない。

「しいなも、いい香りすんじゃーん」

「あたしのはただの石鹸だよ。あたしは好きだけど、やっぱ薔薇に較べるとダメ…かな?」

「いやいや!しいなならオケー!むしろそっちのが、らしいし♪」

「そうかい?」

「そうそう」

薔薇の香りより、石鹸の清潔感溢れる爽やかな匂いのがしいなには似合うと思う。

「ありがと。でも、やっぱ柔らかく揺れる度に花の匂いのするサラサラロングヘアって憧れる。髪質もあるだろうから、あたしは無理だけどさ」

「確かにな。でも俺様からしたらセットの乱れにくい、芯のある硬い髪って羨ましいけどな」

「髪の量が多かったら、そんなこと言ってられないよ!纏めるの、大変なんだよね。あちこち跳ねるしさ」

「濡れてたらそうでもないだろ?」

「まぁそりゃあね。乾いた途端に好き放題さ」

「…でも、しいなの髪、俺様好き〜。ほんのりくせ毛な黒髪ストレート」

今度はこっちが、頭を撫でたり、髪をいじったりする。
好き放題の髪を無理やり束ねている桃色の髪止めを取り、おろさせる。

「あ、ちょっと!」

「おろしてる方が触りやすくて好き〜」

そろそろ、行っちゃうぜー?
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