玉響〜symphonia〜
□Road of …1.守るべきもの
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ドサリッ
「クラトス!」
…肩を強かに打ったみたいだな。
「あれ?」
ロイドの声に伏せられていた姫の瞼が上がり、私を捉えた。
「クラトスさんっ!だ、大丈夫!?」
「あー良かったぁー。さっすがクラトス!」
上からジーニアスの称賛が降ってくる。
「痛いですよね!?ご、ごめんなさい!」
「…いや。私は平気だ。それより、姫、怪我は?」
「えっと…」
私の上から動き、立ち上がって確認を始める。
「んーと…どこも痛くないので、だいじょぶです!」
「…手を見せてみろ」
「え?えと、ハイ…」
白い手を取り確認すると、少し擦りむけていた。
「怪我をしている」
「これくらい、大したことないです。舐めておけば治るし」
手を口に持っていこうとするのを止める。
「バイ菌が入ってはいけない。一度、手を洗って治療しよう。ロイド!少し待っていろ」
姫を連れ、綺麗な水の湧き出る小さな泉へ連れていき、柄杓で水を掬い、姫の手にかける。
「ひゃっ…冷たい!」
「湧き水だからな」
軽く洗ってやり、ハンカチで拭く。
「あとは、少し消毒をしよう」
腰に巻いていたベルトのポケットから消毒を取りだす。
「…あぃたっ!」
「バイ菌が入っている証拠だ。オテンバも程々にして欲しいものだ。貴女はシラルヴェントの大切な姫なのだからな」
「…クラトスさん、怒ってますか?」
薄い白い布を巻いて、治療は終わりだ。
「怒ってはいない。…ロイドとジーニアスが待っているだろうから戻ろう」
リンゴの木へと歩き出す。
私のほんの少し後ろの横をついてくる姫。
手を気にしている。
「どうした?」
「え?あ、クラトスさんって手当てするの上手だなって。いつも消毒とかも持ち歩いているし…」
「何があるかわからんからな」
特にこの姫は、しょっちゅう何かにつまずいて転んだり、体をぶつけたりするのだから。
そして自分の痛みには鈍感なくせに、人の痛みには敏感なのだ。
「…肩、大丈夫ですか?」
「…!」
まさか気付かれるとは思わなかった。
しかしここはしらばっくれよう。
「大丈夫だ。心配ない」
「そうですか…」
木の辺りまで来ると、沢山の実がカゴに入れられ下に置かれていた。
「おかえりコレット。大丈夫だったか?」
「うん。大丈夫!しっかり手当てもしてもらったし。ありがとうクラトスさん」
「職務を遂行したまでだ。ロイド、ジーニアス、しばらく姫を頼む」
「どうしたの?クラトス。いっつも側に居るくせに」
「…喉が渇いたのだ」
「じゃあリンゴ食べればいいじゃん。いっぱい採ったしさ。ホラ」
ロイドが実を一つ投げてきたのを、きき腕と反対で受け止める。
「食物を投げるな」
「うまいぜ〜?」
リンゴをまるかじりしてロイドが言う。
「…ナイフを取ってくる」
「ナイフなら持ってるよ?」
「………」
「あ、あのっ!クラトスさん、私、楊枝が欲しいんで取ってきてもらえませんか?」
「どうしたんだよコレット?」
「手…ほら、布を巻いてるからそのまま持ったら汚れちゃうでしょ?」
「そっか…そうだよねぇ」
「…フ。では少し行ってこよう」
歩き始める。
「姫…気付いていたな」
私がなぜあの場から去ろうとしていたのか。
やはり、彼女は誤魔化せないな…。