玉響〜symphonia〜

□gently
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「剣道っ!?」

部活を聞いて驚いた。

「そうだよ?更に先輩は柔道も出来るんだよ」

「部活を決める時も迷ったのだがな。柔道には、アイツが居たから…」

…アイツ?

しいなが途端に慌て出す。
何よ一体?

「せっ先輩は剣道で1位を獲ったこともあるんですよね!」

「ああ。まぁ何とかな」

「1位って県大会とかのですか?」

「そんなレベルじゃないよ!全国大会でも毎回ベスト4に入るくらいなんだから!」

「えっ!?じゃあ1位って…」

「一度だけ、全国大会で1位になったんだ」

「す、すごいんですねー」

こりゃ俺様、ガラにもなくビビった。

変なことなんてしようものなら木刀で沈められそうだ。

「…セルシウス?」

突然、野太い男の声がして振り向くと、よく日に焼けたマッチョな野郎が立っていた。

「…ッ!お前はっ!」

その男の姿を認めたセルシウス先輩の目が見開かれる。

「帰ってきていたのか」

「…お前には関係ない」

すぐに視線を外し、そっぽを向く。

「相変わらずだな」

悲しげに苦笑して、マッチョは去って行った。

「………藤林」

「はい?」

「出るぞ。場所を移そう」

「分かりました。ホラ、出るから準備しな!」

「コーヒーまだ残って…」

「イッキ飲みでもしな!」

のんびり優雅に飲むのがたしなみなのにわかってないなぁ…。
それに、どうして先輩もいきなり出るなんて…あのマッチョのせいかぁ?

飲める分だけコーヒーを飲んで、お金を払って出る。

「…悪かったな」

次に入ったファーストフード店で先輩がそんなことを言った。

「場所移したのは、さっきの…」

「ああ。アイツと一緒の店に居たくなかったんだ」

「さっきの男と、どういう関係なんですか?」

「ゼロスッ!」

しいなが咎めるような口調で俺の名を呼ぶ。
深く聞いちゃいけない気もしたが、どうにも気になった。

「藤林、気にするな」

「でもっ…」

「いいのだ。聞かれたことには答えよう」

まっすぐに俺を見てくる先輩の瞳。吸い込まれそうになる。

「…先輩の何なんですか?さっきの男」

「アイツはイフリートという。私の幼なじみのようなものだ。昔からよく竹刀や拳を交えた」

「ライバル…ですか?」

「ああ。その言葉が一番近いかもしれない」

「で、そのライバルと同じ所に居たくないというのは…?」

「…つまらぬ意地だ。アイツに話を聞かれたくなかったのだ」

「仲が悪いんですか?」

「ああ。良くはないな。昔は…もう少し違ったのだが……」

ほんの少し、悲しげな目をする先輩。こりゃあ何かあったんだな。
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