玉響〜symphonia〜

□sWeet Days
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「出ていけ!」

「ちょっ…ひどぉーい!」

「酷くなどない。病人でない奴にやるベッドなどない!」

少し頭が痛かったから保健室に行ってみると、クラトス先生の怒った声がして、女の子が出てきた。
服が…乱れてる。何でだろ?

「病人だって言ってんじゃん」

「それだけ元気ならば十分だ。よそへ行け!」

「職務放棄じゃないの!?」

「私は、病人・怪我人の手当てや治療が職務だ。去れ!」

「さいてーっ!」

そのまま、向こうに走って行くのを見送った。

ふとこちらを見たクラトス先生と目が合った。

「今日はどうした?」

その顔は優しくて、安心した。

「あの、ちょっと頭痛がして…」

「そうか。とりあえず入れ」

「あ、はい!」

保健室の中に入ると、ふんわりと私が持って来た花が香った。

「熱を測ってみるといい」

「はい」

体温計を渡され、熱を測る。
測る間、静かなのも嫌なので、話しかけてみる。

「さっきの人は、どうしたんですか?」

先生があんなに怒っていた理由が知りたくて聞いてみる。

「ああ…聞かれていたか」

「ずいぶん、怒ってましたね?」

「さっきの女生徒は…調子が悪い訳でもないのに調子が悪いフリをして来たから、追い返したんだ」

「なんで調子が悪くないのにわざわざ悪いフリをしてるんですか?」

「…さぁな。サボりたかったのではないのか?」

「サボるなんてそんな…」

「嘆かわしいことに沢山居るのだ。そういう輩が。そんな者たちに貸してやるベッドなどないからな」

「そうですよね。本当に調子悪い人が困っちゃう」

「まったくその通りだ」

そんな話をしていたら、体温計が鳴った。

熱を確認してみると37.2℃。

あまり高くない熱だった。

「…とりあえず頭痛薬を飲むといい」

「あ、はい。ありがとうございます」

先生が水道の水とポットのお湯で、ぬるま湯を作って渡してくれた。

「…クラトス先生は、やっぱり優しいですね」

「さっき、女子生徒に『冷たい』と言われたが?」

「だってそれは、サボろうとした人が悪いんだもん。先生は本当に保健室が必要な人のための居場所を守ったんでしょう?」

「…一応、そういうことになるだろうな」

「先生は先生の仕事をしてるだけだし、最低な訳ないもん!」

「…そこまで君が怒るとは思わなかった」

「だって、悪くなんてないのに『最低』とかヒドイ!」

「…ありがとう。人に自分のことで怒ってもらえるのは嬉しいことだな」

軽く、頭に先生の手が触れた。
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