玉響〜symphonia〜

□Double Wind
3ページ/8ページ


「位置について…よーい・ドン!」

グラウンドが騒がしくなる。
カーテンを少し開けてみると、100m走や幅跳び、砲丸投げをしている女子生徒たちの姿が目に入った。

4クラス合同くらいか?

…どうやらスポーツテストの記録を取ってるらしい。

「きゃ〜っ!すごぉい!!」

黄色い声が響くので確認してみたら、100m走をしている辺りで騒ぎが起こっていた。

「しいなってホントに足が速いね」

あの娘、さっきまで寝ていたのに炎天下の中、体育に出るとは…無茶をする。

そんなことをやっていると、また倒れるぞ?

つい気になってしまう。

走る気か?
今日でなくともいいだろう。大人しく見学をしておいて、次の時にやるとかいうことは思わないのか?

「あっ…!」
「!!」

…転んだ。

「コレット!?」

むくりと起き上がり、再び走り、ゴールする。

「大丈夫なのかい!?」

「えへへっ。平気」

「平気って…擦りむいてるじゃないか!」

「だいじょぶ、だいじょぶ」

「駄目だよ!すぐ水で洗って、保健室に行ってきな!」

…あの娘、また来る気か?

何となく目で追っていると、トテトテと歩いて水道へ行く。来るか?来るなら治療するまでだが…。

コンコンッ

しばらくして扉をノックする音がした。

「開いている」

「失礼しまぁす」

やっぱり来たのか…。

「どうした?」

「体育でちょっと転んじゃって…」

ハーフパンツからでる細い足。膝を確認すると血が滲んでいた。

「そこに座れ」

治療のため、椅子に座るのを促す。

言われたように椅子に座ったので消毒をし、大きめの四角いテープを貼る。

「ありがとうございます」

「…大したことではない。身体は、大丈夫か?」

「大丈夫です。走っても気分悪くならなかったし」

「…ならいい。戻るといい」

「はい。ありがとうございました!」

出ていく背中を見送り、一息つこうとコーヒーを淹れる。

保健日誌を見ながら、本当にあの少女は常連だなと苦笑する。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ