玉響〜symphonia〜

□紫陽花
2ページ/3ページ


「…あたしも、そうなのかもしれないね」

「え?」

「あたしも多分、アンタに会ってから変わってるよ。良くも…悪くも」

「ちょっとー『悪くも』ってどーゆー意味よぉ!?」

「アンタに関わってると、ロクなことがないからねぇー」

「ひっでーのぉ!俺様傷付いた!ガラスのハートがボロボロよぉ」

「ばぁっか!」

笑いながら冗談じみて言う。

「それでも、アンタと居るのは嫌いじゃないよ」

梅雨の晴れ間みたいな笑顔で言われて、驚いた。
でも、嬉しい気持ちが勝ってて、こっちも笑顔になる。

「俺様、生まれてきて良かった〜?」

「…そうだね。良かったんじゃ、ないのかい?」

「しいながそう言ってくれるなら、生きることにしがみついてて良かった」

「…なんだいそりゃ」

「誰に言ってもらうより、嬉しいってコト」

そう言って、口付けるとしいなが真っ赤になって俯いた。

「…アホ。あたしも、生まれてきて良かった気がするよ……」

ありがとう。
誰よりも言って欲しい人に言ってもらえた俺は誰よりも幸せだ。
幸せを噛み締めたくて、抱きよせて再び口付けを落とした。

「…あ、あのさぁ……」

しばらくして、赤い紫陽花みたいになったしいなが上目遣いでこっちを見てきた。

「何?」

「…道端、なんだけど……?」

「恥ずかしい?」

「うん…」

「じゃ、道端じゃないトコ行って、イチャつきましょーか」

「な、ななっ…何バカなこと言ってんだいっ!」

「俺様、この生命の喜びをもっと強くしっかり感じたいなぁ〜」

気付かないかと思ったが、意外と本来言いたいことは伝わったようで、ますます赤く染まる。

「まっ…まだダメ!」

「何でよ〜?」

「むっ…無理だからっ!まだ全然、覚悟出来てないし!」

「…まっ仕方ないか。でもちゃんと、いつかは覚悟し・て・ね」

「そ、そのうちね!」

ホント、嘘がないからたまに困っちゃうよね。
そのうち覚悟してくれるんだ?言ったら逆上しそうだから絶対言わないけどさ。

「なんだい?何か言いたそうだね?」

「いやいや。なーんも」

「胡散臭いねぇ…」

「ナイナイ。紫陽花、綺麗だなぁ〜。初めて知った」

「庭に…はないか。アンタのトコの屋敷には不似合いだもんね。飾るのにもアレだしね…」

「そだねー。しいなのおかげで一つ賢くなった。まぁ元々賢いんだけどー」

「…ああそうかい」

「呆れてる?」

「…いつものことだけどね」

「ははっ。やっぱし?」

君の側に居れる幸せ。
俺様の心のアルバムに優しく鮮やかな一枚。紫陽花色のページが増えた。

<おわり>
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ