玉響〜symphonia〜

□pursuit
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…最初は、気のせいかと思ったんだ。

ただの野良猫がついてきてるだけかもしれない。
気配自体、勘違いかもしれない。


けど…やっぱり気のせいじゃない。本当だ。
もう、何日か続いてる。

なんであたしなんかをつけるのさ!もっと他に居るだろう!?

犯人捕まえて、問いただしてやろうか?

ガサガサガサガサガサッ!

「…っ!!」

な、なんだい!?

んにゃー。
バサバサバサバサッ

なんだ…猫と、鳥かい…いちいちこんなことに驚いてるようじゃ駄目だね。

ペタ……ペタ……………

「ッ!!」

来る!人間の気配。

怖い…怖いっ!!

走ってアパートに逃げ込む。
鍵…鍵どこ!?
あった!急げっ!!

家に入り、バタンと閉めたドアを背に座り込む。

誰が、何のためにあたしを…?
目的が見えない。怖い…怖いけど…誰にも……頼れない。

膝を抱え、顔を伏せる。
心臓が、すごい速さで動いてる。
落ち着けあたし!

首元の指輪を握りしめる。
ひんやり冷たい。ほら少し落ち着いて…

カツン…カツン………

ドアの向こうで足音。
冷たい汗が流れる。
まさか、ここまで追って来た…?
どうしよう?怖いよぉ…。泣いたってどうにもなんないってのに、涙が、止まらない。

…カツンカツン……

通りすぎて行った足音。
良かった。他のアパートの住人だ。

涙を拭い、靴を脱いで上がる。

電気を点ける。
朝出た時と同じだ。ホッとする。
身体中の力が抜けて、へたり込む。
ああ…かなり疲れてる。
でも、宿題しないと…






「しいな!?」

玄関でゼロスに出くわした。

「なんだいゼロス。化け物見たような声を出してさ」

「めちゃくちゃ顔色悪いじゃんかよ!?」

「そうかい?気のせいだよ」

「絶対気のせいじゃないし!ちゃんと寝てる?」

「…寝てるよ」

「しいな…」

「アンタに心配されることなんて何もないって。あたしは大丈夫だよ。ちょっと提出物出して…」

瞬間、前が暗くなり、ふらついた。

マズイ…!転ぶ!!

シャランッと、チェーンが鳴った。

「しいな!」

転びそうになったあたしの腰に腕が回ってくる。ゼロスの、腕だ…。

「ハハ…やだねぇ情けない。ありがと」

腕を外させようとしたら、もう一本の腕が肩からあたしを捕らえた。

「ちょっ…」

学校の玄関先で何するんだよ!力が入る腕を感じて、焦った。
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