玉響〜symphonia〜

□水
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「全く…今度はどこ行ったんだい!」

生徒会書記のリフィルに毎度のごとく頼まれた、人探しの最中。
いつもの所に居ない尋ね人に小さく悪態をつく。

どこに居ても目立つ赤髪。黙っていれば二枚目で、女の子にも騒がれる。
まぁ実体はただの色魔だと思うけどね…。

「ああもう!あの色魔っ!」

「…色魔。沢山の女性をもてあそぶ、不誠実な男性のこと」

独り言に突然、解説が入るものだから驚いて確認すると、見下ろした所にピンクのツインテールが見えた。

「うわぁっ!びっくりしたぁ…」

「驚かせてごめんなさい」

青鼠色の大きな瞳が見上げてくる。小学生か…?

「…誰か探しているみたいだったから」

「あ、あー。えっと、赤い長髪の身長180センチくらいの男を見なかったかい?」

「…ゼロスくん」

「あ、そうそう。そいつ。そいつを探しているんだけど…」

「…大学の方。さっき」

「大学の方?」

コクリと小学生(?)女子が頷く。

「屋上…かな?あ、ありがとうね」

「どういたしまして」

可愛い子だけど、表情があまり変わらなくて、少し心配だ。今からそんなんで大丈夫かね?

ま、とりあえず、ゼロスを見つけないと。
大学に向かう途中、まだこっちを見ていたから手を振って挨拶をする。向こうも手を振って返してきた。

なんだか不思議な雰囲気の子だねぇ…。





一番最初に出会った、大学の屋上へ行くと、案の定。
煙草を吸って、遠くをぼんやりと見るゼロスが居た。
文学っぽく言えば、“アンニュイ”な感じ?

「ゼロス!」

呼びかけると気付いて振り返る。

「おやぁーしいなチャ〜ン。いらっしゃーい。俺様に会いに来たのかな?」

「そうだよ?リフィルからまた捜索を依頼されたからね」

「…ホント、そういう時じゃないと、俺様の所に来てくれないよね」

「なんで用もないのに会いに来ないといけないんだい?」

「…そうだね。で、今回はどんな御用?」

「よく分かんないんだけど、林間実習の時の班員をみんな集めて来いって言われたんだよ…」

「他のみんなは?」

「まだだよ」

「ヒューッ。もしかして俺様一番?俺様カッコイイー」

「…一番だけど、カッコイイは関係ないと思うよ?」

「んがっ。分かってるよー。で、なんで俺様に?もしかしてコレって、愛?ラヴ?」

「いや全然。アンタが一番捕まりにくそうだったからねぇ」

「先に捕まえておこうと…ナルホドね。大正解よ。じゃ、行きましょーかね」

煙草の火を消し、歩き出す。

「やっぱり体に良いわけないのに吸うのって、分かんないよ。あたしは…」

「んー?まぁクセみたいなもんだし。慣れれば平気よ。何?俺様の身体が心配?」

「そういう訳じゃ…ないけどさ」

別に恋愛感情とかそういうものではないが、知り合いとして少し身体のことが心配になる。それが人情ってもんだろう?
言ったらまた話がズレそうだし、言わないけどさ…。

「…ま、行こっか。とりあえず」

「うん…」
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