玉響〜symphonia〜

□風
2ページ/8ページ

気持ちのいい風が渡り廊下を吹き抜ける。

花の匂いがほのかにして、思わず風の来た方向に目をやる。

太陽が隣の大学の屋上を照らす。
ちらりと赤い光が目についた。屋上に人が居る。印象的な赤い髪の男の人。

ニコリと笑い、軽く手を振ってくる。
なかなかの二枚目だ。
軽く、頭を下げておく。見えているか知らないけど。
あたしは目がいい方だから見えるけど、たぶん普通の視力の人では見えないだろう。

また風が吹く。今度は少し強い。

あいたっ…目にゴミが入った。
何度か瞬きをして、目を湿らせ、涙を出す。
…ッ。取れたかな?

ハンカチで拭ってみる。
あ、少し良くなった気がする。

一応、水でも流しておこう…。
水道に向かい、目を洗う。

よしっ!もう大丈夫だ。

手も洗い、拭きながら歩く。

「あれ…?」

銀髪の長身の女が教室という教室を覗いていた。
周りがザワザワする。

「リフィル様だ…」
「相変わらず、美っじーん」

美人で有能、有名な生徒会書記のリフィルだった。

「何やってんだい?」

「アラ、しいなじゃない!ちょうど良かったわ。この人知らない?」

脇に抱えていたファイルを開いて見せて来たのは写真だった。

真っ赤な髪のヘラヘラ笑った男。

「さぁてねぇ…」

何処かで見たような…?

「あ…!」

「知っていて?」

「さっき見たよ!」

「本当に!?何処で見たの?」

「大学の屋上…に居た奴だと思う」

「大学の屋上〜!?全く何やってるのかしら!」

「コイツがどうしたんだい?」

「探しているのよ!でも大学の屋上?…無理だわ」

「何かあるのかい?」

「生徒会の集まりがあるのよ!大学まで行ってたら間に合わないわ…」

「…あたしが呼んで来ようか?さっきだから多分まだ居ると思うし」

「助かるわ!じゃあお願い!生徒会室にすぐ来るように伝えてちょうだい」

「分かったよ。生徒会室に…だね?」

「ええ。頼んだわよ」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ