玉響(二)〜symphonia〜
□reddish
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「ゼロスッ!アンタ、いい加減におしよ!理系大学志望のくせに、物理の課題を全く出してないってどういうことだい!?ちゃんとやりなっ!!」
いつもの如く、説教垂れに隣の校舎までやって来て、元凶を怒鳴り散らす。
「あー…なんか物理はやる気が出ないんだよなぁ」
面倒くさそうに言う腐れ縁のゼロス。あたしはブチ切れた。
「やる気が出ないとかそういう問題じゃないだろう!?散々に先生に言われたじゃないか。きちんとやっておけって!」
「だぁって、物理以外でちゃんと点数取れればいいしぃ〜」
「ダメだよ!アンタの志望校は物理重視だって言われてんだから!」
「だーいじょーぶだって。俺様、元々やれば出来る子だし、物理なんかなくてもへーきへーき」
やる気なく、まだ減らず口を叩く奴には最終兵器。
「そんなこと言ってると愛しのサラサちゃんに愛想尽かされるよ?」
大好きな彼女のためなら頑張るだろう。
「それはないな。大じょーぶ。ラブラブだからv」
…失敗した。一気に説教する気が失せる。
「藤林〜こんなアホ放っとけ放っとけ〜。一度フラれて痛い目見て、緩みまくった顔、締め直させてやりゃいいんだから」
「そうそう。いつまでもこんなのに世話焼いてないで、俺らと遊ぼうぜ」
「うんうん。それがいい」
「…アンタ達ねぇ……」
しょっちゅう来るので、すっかり仲良くなってしまったゼロスのクラスメイトたち。
マラソン大会で応援されたのにはビックリした。
「怒ってばかりだと眉間にシワ寄るし、こんな奴のために勿体無い勿体無い」
「そうそ。同じ怒るなら俺に」
「いや俺に」
「い〜や俺に!」
「藤林に喝入れてもらえたら頑張れそうだもんな」
「そーかぁ?」
「ゼロスは黙ってろ!」
「藤林にいつも怒ってもらって羨ましい奴め!」
「ホントホント。…あ、やべ」
「ババか?」
「ざま見ろ〜♪」
「アンタ達もババ抜きしてるヒマあるなら勉強しなよ!!」
「藤林に怒られたぁ」
「よ〜し。俺、いち抜けた!」
「あ、ババ引いたからって逃げんなよなぁ」
仲がいいというか…アホというか……まぁいいか。
「ともかくっ!ちゃんと将来のためにも物理の課題を全て明後日までには出すこと!分かったね!?」
「なんで明後日なんだよ!?〆切、来週のもあるだろ!?」
「やらないからじゃないか。明日までにしようか?元々、出来る子なんだろう?やる気さえ出せば当然、楽勝だよねぇ?」
「…そういうのあげ足取りって言うんだぜ」
「あげ足でも何でも結構だよ。また明後日来るから。それまでにやってなかったら…どうなるか分かってるよね?」
ポキポキと指を鳴らしながら笑顔で言ってやる。
「怖っ…」
「分 か っ て る よ ね?」
「ハイ…」
「よっし!じゃ、あたしゃ戻るよ」
「いつでも来て!」
「んで俺たちも叱ってv」
「今度デートして♪」
「何言ってやがる!デートするのは俺だ!」
「なにぃ!?俺だ!!」
「…テストで一番点がいい者がその権利が与えられるってのはどうだ?」
「そんなんお前で決まりじゃねーか!」
「初めから勝負を投げるようじゃダメだな」
「何だと!?やってやるぜ!!」
騒がしい教室を後にする。しまった!少し長居しすぎた!走って戻る。
「あ!しいな〜?…っと。行っちまったか」