玉響(二)〜symphonia〜
□pinkish
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ずっと開けるか開けまいか迷ってた。
開きそうになっては閉じて。隙間風が入って来てはゆらゆら揺れて。
最近、それがコンコンと叩かれる。開けたら戻れない。でも…
待ってるのは君の笑顔?泣き顔?怒り顔?
ノブを握る。
開けるのは自分。
手のひらに滲む嫌な汗。
待ってるのは君の笑顔でありますように。
今こそ、この扉を開けよう―――
「しいな!」
名前を呼ぶとこげ茶の瞳がこちらに向けられる。
「ゼ、ゼロス!」
何だか顔が赤らんでいる。
「どうした!?熱でも出たか?」
彼女が居るのは保健室のベッドの上。さっき俺の隣で倒れて慌てて運んできたのだ。
「えっ…いや違うよ!熱なんて出てないよ!!」
「でも顔赤いぞ?」
そばに行き、額に手を当てると熱を感じる。
「やっぱりちょっと熱っぽいんじゃ…」
「ゼロス…!」
視線を下ろすとちょうど上目遣いのしいなの視線とぶつかり合った。
ヤバい。可愛い!つか、近っ…!!
「あ、わ、わ、わり!」
焦って手を離し、近づきすぎた距離を広げれば、頬を紅く染め、俯くしいな。変な沈黙が流れる。
しっかりしろ俺!ちゃんと言おうと思って、わざわざ着替えまでして戻って来たんだろ?いつもの自分で、ちゃんと気持ちを伝えるために。
…でも、どう切り出せばいいんだ?いきなり言っても意味分かんねーだろうし、適当な話で繋げて…ゔーん?
「……ねぇゼロス」
「な、な、な、なんだ?」
突然しいなが俺に語りかける。ビビった。声、裏返っちまった…情けねぇの。
「……あたしに話って、何だい?」
「!!」
いきなり核心をつかれ面くらった。俺様、まだ心の準備が……って、言ってる場合じゃねー!!
「……アンタのこと、待ちながらずっと、考えてたんだけど分からなくて。モヤモヤして気持ち悪いんだよ。言いたいことがあるなら、さっさと言っとくれ!」
さっきの、しおらしいしいなはどこ行ったんだか。いつもの、意思の強い瞳で真っ直ぐ俺を捕らえる。
腹、くくるしかない…よなぁ。
「…っ俺、は…、俺が言いたかったのは、その………」
…怖い。やっぱり。拒絶されたら、否定されたら……俺、は………でも…………
「ゼロス………?」
やっぱ、気持ち伝えないままには終われねぇ。
壊れたら…「作り直せばいいんだよな」