玉響〜symphonia〜
□Road of …4.君と、共に
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大陸一の大国テアセラの王都メトキルオ。
観光サービス業が非常に盛んで、普段から賑やかなこの街は、いつもより更に活気付き、道や広場のあちこちから、民芸品や特産物を売る商人の声が聞こえる。
「もうすぐね」
「えぇ!楽しみだわ」
「当日はきっと広場が人で埋まるわよ」
「大層な美形と評判なゼロス皇子様の顔を一目でいいから拝みたいわ!」
「私は姫の方が気になるわ。お綺麗なのかしら?」
浮き足立った雰囲気に、街の娘たちも落ち着かない。
もうすぐ、この国の第21皇子ゼロスと、農業を生業とする小さな国シラルヴェントのコレット姫の婚礼の儀が行われるのだ。
会場は王族たちの暮らす宮殿からほど近い教会。
別邸から新婦であるコレット姫が輿で運ばれやって来るのを教会でゼロス皇子が迎え、婚礼の儀の後は、二人で宮殿に入り、バルコニーでお披露目がされる。
皇子が第一妃を迎える時にだけ行われる、何年かに一度の豪華な式。
一夫多妻制であるテアセラ国王家の中でも第一妃は特別なのである。
バルコニーでのお披露目の際には一般の民衆も宮殿前広場に入ることが許されている。
めったに見ることもない王族の顔を拝めるということもあり大変な騒ぎになるのだ。
ここが稼ぎ時とはりきる商人たち。様々な場所からやって来ており、ちょっとしたお祭り騒ぎの街の中。
最奥に佇む宮殿内は、準備のために慌ただしい。それに隠れ、不穏な風も漂っている。
「…邪魔な皇子よ」
「今が絶好の機会。そろそろあの計画を実行しては?」
「そうです。実行すべきです!」
「………そうだな」
「うわぁ綺麗なドレスだね!絶対似合うよコレット」
「えへへっ。そうかな?ありがとう」
「うわ!これスカート長すぎじゃねぇ?ひっかかって転びそう」
「あ、そっか…コレットだもんね」
幼なじみのロイドとジーニアスがトルソーに着せられた婚礼衣装を見て、そんなことを言う。
そのくらい、今回の婚儀の主役のコレット姫は、ドジな娘なのである。
「だから今、長いドレスでも美しく歩けるように、練習してるのよ」
姫の教育係でジーニアスの姉リフィルが苦笑しながら言う。
「婚礼までに間に合うの?」
「…まぁ、少しは慣れてきたと思うわよ?」
「うん。慣れてきたしきっと大丈夫だと思うよ〜」
笑顔のコレット姫。
「…大丈夫じゃねぇだろ」
ボソッとロイドが呟く。
「多分…大丈夫じゃないだろうな」
側で聞いていた、姫の護衛のクラトスも低く呟き返す。
「どうにかなんねーの?」
「これに関しては無理だな。姫の頑張りに期待する他ない。もっともそこまで行き着くかも分からないがな」
「え?」
クラトスの意味深な発言に、ロイドが不審な顔をする。
「…お前にも協力してもらわないといけないかもしれないな」