玉響〜symphonia〜
□Road of …3.君を、護る
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大陸で最も繁栄し、沢山の小国と同盟を結んでいる大国テアセラ。
その縁はもっぱら、数多の小国から支配者が娘や息子を送り、テアセラ王家に入れる…といった方法で結ばれる。
「コレット〜!」
農業の盛んな小国シラルヴェントの姫、16才のコレットも縁続きとなるためにテアセラへとやって来た。
幼い頃から定められたテアセラ国第21皇子ゼロスとの婚礼まで間もない。
6つ上の皇子と実際に会ったことはないが、色々な噂は聞いていた。
少々好色な所はあるが、見目はとてもよろしく、勉強に関しては大変優秀ならしい。
婚礼当日に初めて会う生涯の伴侶。不安と期待の入り交じった不思議な胸の高鳴りを抱き、テラスにある椅子に座り庭を眺めていた。
側には祖国からついてきた護衛のクラトスが控える。
「すっげーぞ!面白い果物みつけたぜ」
庭中に響き渡るくらいの声で言いながら、やって来たのは幼なじみで護衛見習い(?)のロイド。
「変なのがいっぱいあるよ!」
ロイドに続いて、息を弾ませながら、もう一人の幼なじみであるジーニアスも果物を抱えて側へと来る。
「勝手に取ってきたのか!?」
咎めるようにクラトスが言う。
「ちゃんと許可もらったぞ。プレセアに」
婚礼準備中の仮住まいは、コレットの住んでいたシラルヴェントの屋敷より少し大きいくらいで、倍くらいの広い庭がある。
シラルヴェントでは、ロイドとその父ダイクが庭の世話をしていたが、テアセラ国ではその役をプレセアという小柄な少女がやっている。ピンク色の髪を二つに結び、大変可愛らしいが斧を振り回すことの出来るなかなかの怪力である。
「いいと言われたのか?」
「ああ。聞いてみたら『…どうぞ』って」
「…まぁ許可が出たのならいいのだろうな。多分……」
「はい。これ、コレットの分」
「うわぁ…ありがとうジーニアス!これはなんていう果物?」
渡された実は、真ん中辺りに裂け目が入り、中身の赤いツブツブが見える見たことのないようなものだった。
「キルマフルーツっていうらしいぜ」
「味も不思議だよ!甘いんだか酸っぱいんだかって感じ」
「なかなかうまいぞ。木にいっぱい実が成ってるとこコレットにも見せたいな!」
「うん。裂けてないのもあるんだよ。まだ未熟だから採ったらダメなんだって」
「へぇ〜。そうなんだぁ。見てみたいけど…」
ちらりと三人の視線がクラトスへと流れる。
「駄目だ。姫は今、大事な時だからな」
予想通りに却下された。