玉響〜symphonia〜
□blueish
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何であたしはこんな奴を好きになっちまったんだろう?
叶わぬ想いを抱いて、あたしはどこに行けばいい?
「ゼロスッ!何だいこの進路調査表は!!」
「ゲッ!しいなっ!」
先生に言われ怒鳴りに行ったら、クラスメイトとのんびりカードゲームをしている一際目立つ赤い髪。
あたしが貴重な昼休みの時間を割いて、わざわざ隣の校舎まで来てやったのに!
「そんなんやってる暇があるなら、真面目に進路考えな!再提出だよ。期限は今日の放課後まで!!」
伝えるべきことを早口で捲し立てる。
「え゙ーっ!何でよ!そんなご無体なぁ…しいなちゃん、代わりに書いておいて」
「馬鹿言ってんじゃないよ!自分で書きなっ!あたしが書いてどうすんだい!」
「えー、じゃあ第一希望“お婿さん”で、第二希望“スポーツ選手”、第三希望“大工さん”で!」
「小学生の『将来の夢』じゃないんだから、ちゃんとしなっ!」
ほぼ白紙の調査表を投げつけてやる。
「うっはー。また藤林とゼロスのドツキ夫婦漫才が始まったぞ〜」
「相変わらずラブラブでv」
毎度お馴染みの光景をゼロスの周りに居た奴等が、冷やかしてくる。
「冗談!だーれが夫婦だい!こんな奴、お断りだし、彼女との仲を邪魔する気もないよ!!」
「彼女って藤林じゃねーの?」
「そんな訳ないだろっ!絶対嫌だよこんな奴。ただのクサレ縁ってだけで、イチイチなんであたしがこんなことしないといけないのさ全く!」
「しいなちゃんってばヒステリック〜。欲求不満?」
「誰がだい!ちゃんと書いて提出するまで帰れないからね!放課後また来るから覚悟してなっ!!」
足音荒く、ゼロスのクラスを出る。
男だらけの理系コース。
文系コースを選んでから、縁がこれで切れると思っていたのに、なんだかんだで結局、ゼロスの世話をしている。
なんで先生もあたしに頼むかな?
『彼を説得出来るのは貴女だけだわ!』
とか言ってさぁ。
ああ見えて頭はいい。ただやる気を出すことが極端に少ないだけで…。
彼女とのデートになら、やる気を出すのだろうか?
ゼロスの彼女は、レベルの高い由緒正しい女子校に通う金髪美人。
一度だけ、二人で居る所を見掛けてしまった。
髪の色もあるだろうが、並んでいると目立ち、道行く人の誰もが振り返る。
『美男美女のカップルね』
『いい女〜』
『あの子カッコイイ!』
みんなが納得し、聞こえるのは賛美の言葉ばかり。
どこからどう見てもお似合い。絵になる二人。
胸が苦しくなって、しばらくその場から動けなかった。