玉響〜symphonia〜
□Road of …2.守りたいもの
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大陸のほぼ中央にドンと居座る大国テアセラ。
大陸で最も繁栄し、沢山の小国と同盟を結んでいる。
その王都メトキルオ。
国で一番美しいと言われる整備された家並みに石畳。街灯が等間隔に並び、観光サービス業が非常に盛んである。
その最奥に構えるのは、世界で一番美しい建築物として評判の絢爛豪華な宮殿。
退屈な夕飯を済まし、その中の大理石の長い廊下を歩いていた。
「ゼロス皇子、夜遊びが過ぎるようですな」
話しかけてきたのは国王が絶大な信頼を置く、無駄に腹肉を蓄え、偉そうに髭を生やしている教皇。
なんでも入れられそうな腹。抱えてるのは脂肪だけじゃないだろうな。
「…別に。アンタには関係ねぇよ。教皇サン、アンタもなかなかお盛んだったらしいじゃん?」
「若気の至りだ。あなたはこの国の皇子という立場を忘れているのではないか?」
「ちゃんと忘れてねーよ?俺様なりに」
折り合いの悪い相手にはつい口調が辛辣になる。
ムッとされたが無視して進む。
「…大概、教皇も飽きないねぇー」
「アンタもね!」
ついてきていた護衛のしいなが言う。
白い肌に真っ黒で艶やかな髪。女性らしい丸みを持つ体を藤色の服と桃色の帯で覆っている。
鋭い眼差しの焦げ茶色の瞳に俺を映す。
「しいなも嫌いでしょアイツ」
「そういう滅多なことは言うもんじゃないよ」
「ハイハイ。そーですね。どこで誰が聞いてるか分かんないもんね」
防音設備の完璧な自室へと入り、しいなが変わった所はないかチェックする。
花瓶の下や、額縁の裏。
ベッドの下ものぞきこむ。
「しいなースパッツはなしにしようぜぇ」
せっかくのポージングが台無しだ。
「履いてなかったら大変だよ!動きにくいしね」
「俺様ガッカリ〜。でもま、チラリズムっていいよね」
服の間からチラリと見える谷間に釘付けだ。
「大丈夫みたいだよ」
立ち上がったしいなの鎖骨の辺りにそっと触れようとして、感付かれて殴られた。
「いってぇーー」
「…はぁ。ホント、うつけ皇子」
「もうちょっと優しく拒めよ…」
「馬鹿なこと言ってんじゃないよ!」
盗聴器が仕掛けられた心配はないようだ。
この国は大国だけあって、色んな輩が居る。城の中だけでも幾千万の野心や野望、謀略が渦巻いている。
まあ、王族だけでもすごい数になるからな。
俺様は第21番目の皇子だし、姫も足したらキョーダイだけで結構な数になる。
そいつらが嫁やら何やらもらっているのを考えれば大ゴトだ。中には子どものいる所もあるしな。
遣えるメイドたち使用人も含めれば、城は小さな都市のようだ。
「んじゃ、報告ヨロシク」
「ベッドの上から動かず聞いとくれよ?」
部屋に男女が二人きり。なんていうシチュエーションなのに、色気も何もないこの状況。
まぁ二人の立場を考えれば、当然っちゃあ当然なんだけどさ。
「もっと側に来りゃいーじゃん」
「これ以上は危険な距離だからね!」
「べっつにベッドに引きずり込んだりなんてしないぜぇ?」
「…皇子。ふざけないでください」
しいなが敬語になる時はよっぽど怒っているか混乱しているかのことが多い。
今回のは怒ってんなぁ…。おとなしくしとこう。